気づいた時には……

□三話 血塗れた男
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 先日、銀時がテレビで


 過激攘夷浪士『白夜叉』


 として指名手配することが流れた。

 そして辻斬りをやっているのも。

 それを皆が知った。

 それは地上にも、宇宙にも、地下にもすべてに伝わった。

 柳生家、幕府、かまっこクラブ、そして吉原……。

 白夜叉の信じた者達はほとんどの者が信じなかった。

 信じた者の方が少ない。

 吉原でも白夜叉の情報がすぐに届いた。

 皆銀時を恐れた。




 だがたった二人、信じる者がいた。


「銀時が辻斬り……じゃと!?」


 月詠は手を血が滲むほど強く握りしめる。

「……銀さんは、あの人はそんなことするような人じゃない」

 日輪は下を向いていた。

 二人はその知らせを聞いた瞬間、その情報は嘘情報かと思ったが、本当らしい。

 そして皆がその情報を信じているのも……。

 百華たちが白夜叉が来ないようにすると、見張ると言っていた。

 それはまだしも、来たら殺す、と言った時には月詠が激怒した。

 銀時がそんなことする奴じゃない、と。

 もう一度よく考えろ、と。

 だが誰も聞きやしない。

 晴太さえも
「裏切られた」
と言っていた。

 そんな晴太に日輪は平手打ちをかまし、今晴太は家出中だ。

 後から新八が来て家に泊まっている、と言ってきた。

 日輪は後悔はしていなかった。

 だって銀時は恩人だから。

「この吉原を。
 太陽の光が届かない、真っ暗な闇で、檻の中のような窮屈に暮らしていた吉原を救ってくれたのは誰じゃ!?
 師匠からこの吉原を救ってくれたのは誰じゃ!?
 伝説の花魁、鈴蘭太夫の約束を果たすようにしたのは誰じゃ!?
 紛れもなく吉原の救世主である銀時であろう!?
 救世主がここを壊すか!?
 銀時は何のためにここを護ってくれたんじゃ!?
 ここを護りたいと思ったからじゃろ!?
 なのに……!」



「……月詠」



 救世主がそんなことするはずない。

 だっていつも護ってくれたから。





 信じてくれたから。




 銀時はいつもそうだった。

 めんどくさいって顔して、いつも助けてくれた。

 とても不器用な男だ。

 むちゃくちゃで馬鹿で、何考えてるか分からなくて……。

 それでも強かった。

 力も、心も、自分の武士道を貫こうとする銀時は、とても輝いていて、真っ直ぐに立っている。

 迷ったりしない、真っ直ぐな心を持った侍……。

「頭!大変です!白夜叉が暴れています!」

「「な!?」」

「日輪様は早くお逃げになってください!」

 だが日輪は逃げなかった。

「日輪様?」

「……月詠」

 日輪が月詠を見る。すると月詠はため息をついた。

「分かった。……行くぞ日輪」

 そう言うと車いすを急いで押して、その方へと向かった。

「ちょ、頭!?」

 月詠と日輪は早く銀時に会いたかった。

 どうしてそんな事をしているのか聞きたかった。

 とにかく騒がしい方へと走って行く。すると





「死ねェェェ白夜叉ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」






 男の声が聞こえたが、すぐに悲鳴が上がる。

 近づいていくごとに、血の匂いがきつくなっていった。

 月詠はまだしも、日輪は慣れていない。

「うっ」

「日輪!?大丈夫か!?」

「……あたしは大丈夫。だから早く銀さんの所に……」

 月詠は頷いてその人ごみを分けた。

 そして真ん中にいたのは、血まみれの銀時。

 いや、それは銀時とは思えない程、冷たい目をした、血に染まった男だった。

銀時は血の付いた真剣を持っており、足元には


死体と
大量の血が……。
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