気づいた時には……

□一話 殺人『鬼』
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 皆が寝静まった夜。何処からか悲鳴が聞こえる。

「ひっ!お、鬼だぁぁぁぁぁ!」
「た、助けてくれぇぇぇぇぇぇ!」

 悲鳴を上げている本人――男たちは怯える。

その視線の先には、左手には人の首を持って、右手には刀を持った血まみれの鬼と、血と言う名の真っ赤な華を咲かせた人間の屍があった。

その鬼が殺したのだ。

その鬼、殺人犯は……銀時。

「鬼?ククッ」

 銀時は笑う。
 だがその笑みには今までのような温かい笑みはない。冷たく、感情の無いような笑みだった。

 銀時は男たちを見る。男たちの瞳には、恐怖に染まっていた。明らかに銀時を恐れている。そして死にたくない、と思っている。

 銀時はそんな男たちを見て改めて思う。

「己はやはり鬼なのだ」と。

「鬼だから殺すんじゃねーか。どうせそんな汚ねー命、無い方がましだろ?俺が解釈してやらァ。怖いって?大丈夫、一瞬で終わるからなァ」

 ブシャァァァァァ!

 服に男たちの血が飛び散ったのを気にせずに、銀時は斬った男たちを見る。見下す。

 その全ての屍の懐を漁り、財布や金になりそうなもの、食料などを奪い、己の懐に入れる。さらに、もうこの屍に用はないとでも言うように、刀を真下に振り降ろす。

 グシュッと嫌な音がして、屍の首を胴体から離した。手も、足も、全てをバラバラに切り裂いた。

 もう死んでいるので左程血は出てこないが、足元はすでに血の雨でも降ったかと思うほど、どす黒く赤い血がたまっていた。歩けばピチャッと血が跳ねてブーツにつく。やはり銀時は気にしなかった。

 銀時にとってはもうこんな事は「どうでも良い事」なのかもしれない。

 人を斬るとき、
 屍の懐から盗むとき、
 屍を切り裂くとき……。

 残酷な行動をとっても、銀時の顔に「感情」の色は見られなかった。

 己がどんなに酷い事をしているかが分からなくなっていた。だって自分は鬼だから。そう思い続けたらこうなってしまったのだ。

 己は「鬼」だから。だからこういう事をするんだ。

 銀時は刀についた男たちの血を払って鞘に納めた。

 すると遠くからサイレンが聞こえてきた。その音がした方をじっと見て、暫くして屍の首を持って、銀時は真っ暗な闇へと姿を消した。

 姿を消すと同時に、銀時自身の心も真っ暗で、誰の声も聞こえない、誰の手も届かない深い闇へと沈んでいった。
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