君との物語
□えぴそーどY
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「綱吉クン、みーつけた!」
「し、志野さん……」
「探したんだよー?でも、やっぱり此処にいたんだね♪」
笑顔で近づいて来る叶子が怖くて、足が動かなかった。
「綱吉クンってさぁ」
目の前まで来た叶子は笑みを消した。
「ほんっとうにムカつくね」
そう言って綱吉の腹部を殴った。
「うっ……」
「私ぃ、ボスになったから、強くならなきゃと思って強くなったんだよ〜?偉いでしょ?」
クスクスと笑う叶子は不気味だった。
「あのさ〜、銀時クンを脅して、自分の良いようにこき使えるようにしたの〜?」
「ち、ちがっ!!」
「だってそうでも無きゃ、アンタの味方なんているはずないじゃない」
違う。
銀時は自分から言ってくれた。仲間になると。
だから、脅したわけじゃない。
「ぎ、んさんを、脅してなんか、ない!!」
「へ〜?じゃあなんで私に惚れないの?おかしいなー。私こんなにかわいいのに〜」
そう言っている叶子は全然可愛くなんかなかった。ただただ、その歪んだ笑みが怖かった。
「だから、仲間になってもらえるようにしないとね♪」
叶子は制服のポケットの中からカッターを取り出した。
「これで、アナタも終わりよ」
カッターを己の腕にあてた。
「っ!!やめて!!」
綱吉は急いで叶子の腕を掴んだ。勿論叶子は抵抗する。そして綱吉がカッターを取り上げた瞬間、叶子はにやりと笑った。
「綱吉クンって本当に馬鹿だよね〜」
綱吉はそこでハッと気が付いた。だが、もう遅かった。
「キャァァァァァァァァァァァァ!!!」
叶子は思いっきり叫んだ。屋上に向かう階段の方からどたどたと足音が聞こえる。
あぁ、またか、と。綱吉は絶望した。
そして扉が勢いよく開いた。
「どうしましたか十代目!ってテメェ……!」
「た、助けて隼人クンに武クン!きゅ、急に綱吉君がカッターを持って……」
「最低なのな!!」
怯えてみせる叶子に、山本と獄寺はそれを信じ、綱吉を睨みつけた。
「ち、違うよ!これは――」
「なにも違わねーがろーが!じゃあその手のカッターは何なんだよ!!」
やはりそうなるのか、と少し悲しくなった。
「信じてよ、山本、獄寺君……」
「誰がテメェ何かを信じるかよ!!」
また殴られる。
そう思った時だった。
ドカッ
「だから邪魔だっての」
朝と同じように、銀時が獄寺を蹴飛ばした。その光景に皆唖然とする。
「お待たせツナー。ほらよ」
ひょいっと投げられたものを、少し慌てながらもキャッチする。それはまだ冷えているペットボトルのお茶だった。どうやら本当に買ってきてくれたらしい。
「ってェな―――ぐっ!!」
「自動販売機意外と近いなー」
獄寺を踏みつけて綱吉の所まで歩いてきた。
「あ、あの、ありがとう。ごめんね、なんか……」
「気にすんなって。それよりここ良いな。自動販売機にイチゴ牛乳がたくさんあったぞ」
嬉しそうに持っているのはとてもあまそうな、パックのイチゴ牛乳だった。
「いやー、これで糖分確保だな」
「さっきも甘い物食べてたよね!?」
「あれ位じゃ足りねーよ」
普通に何もなかったように話す銀時に、山本と叶子は呆気にとられていて、獄寺は寝そべったまま、怒り狂っていた。そしてゆっくりと起き上がった。
「テメェ……!何しやがる!」
「え?あ、いたのハヤシライス君」
「誰がハヤシライスだ!」
「キノコさんとタケノコ君もどうしたの?」
「オレがタケノコで叶子がキノコ……?」
「何で十代目がキノコなんだよ!!」
銀時はめんどくさそうに「何でいるの?」と聞いた。すると四人はハッとした。
そういえばシリアスな空気だったのをすっかり忘れていた。
「沢田が叶子に襲いかかったのな」
「え?ツナがキモ子に?ないない。んな訳ねーだろ。ツナが襲う?無理無理。こんなに弱気のツナがんな事するかよ」
庇ってるのか貶してるんだかわからない銀時に、綱吉は苦笑した。
「実際してるだろ!ソイツが持ってるもんが証拠だ!!」
銀時は綱吉がカッターを持っている事に気が付き、驚いた表情になった。