短い夢

□雨宿り
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「一雨来そうだね。」
甘味屋の暖簾を持ち上げ、
総司が空を見上げる
「さっきまで雲一つない
快晴だったのに…」
「空はいつだって
移り気だからね。」
「だからって
今、雨を降らさなくても
いいのに…」
私は総司の後を追うように
駆け寄ると不満を漏らした
「今日のお参りどうする?
やめとく?」
総司の問い掛けに
私はふるふると頭を左右にる
「ううん、行きたい、
だって…このお参りは
私達にとって決まりごとみたいなものでしょ う?」
「そう言うと思ったよ」
総司は会心の笑みを見せると
私の手を握り走りだした。
「きゃっ!」
突然走られて
足がもつれそうになる
「雨が降って風邪でも引いたら
当分二人で出かけられないからね急ぐに越したことはないよ」
繋がる指先の温もりと
総司の背中に
私はドキドキしていた
「うん、急ごう!」
雨が降る前に神社に着きたくて 私達は走った
ーザァアー
運良く境内に入ったところで
雨が降り始める。
「通り雨かな?」
「そうみたいだね」
参拝を済ませた後私達は
雨足が収まるまで
雨宿りをする羽目に…
辺りを見回しても
人気はなくて
参拝者は皆雨が本降りになる前に帰ったことがわかった
神域に大好きな人と二人っきり 私は妙な緊張感を覚え
繋いだままの手を
思わず引っ込めてしまった
「名無しさん顔真っ赤。」
「き、気のせいだよ、きっと」
「へぇ…でも
これは錯覚なんかじゃないよ?」
私は総司に腕を掴まれていた
だんだん近づいてくる
総司の顔に私は
思わず目をつぶった
瞬間頬に感じた 柔らかい感触
「っ///総司…駄目」
「此処には僕と名無しさんちゃんだけ…
他に誰もいないから大丈夫だよ」
ニッコリと笑う総司
「その、見てる…っ…神様が!」
とっさに思いついた言い訳が
総司に通じる訳がなく
「…別にいいんじゃない?」
と、簡単に返されてしまった
「不敬じゃ…」
「だってこの神社は元々
恋愛成就の神霊を祀ってるんだし。」
「けど…っ」
「僕達の接吻ぐらい
大目に見てくれるでしょ?」
「無事叶いましたって報告も兼ねてさ
ほら僕に名無しさんの可愛い顔を もっとよく見せて。」
降り続ける雨の中
私達は互いの情愛を深め合う
総司は腕の中にいた私を
抱き締めた
「名無しさんのこと
僕の一生を懸けて愛し てあげる」
「私も総司に全てを捧げます」
神前で男女が誓いを立てるは
丸で夫婦の契りを交わすか様
「ほら名無しさんあれを見て?」
そう言われて空を見上げると
そこには
「綺麗…」
今まで見たこともないような
綺麗な虹が架かっていた
「やっぱり神様は
僕達の事を祝福してくれたんだよ」
「私達きっと幸せになれるね」
だって私の総司への思いは
たとえ神様であっても壊せないのだから
end

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