★短編☆
□キミの体温
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放課後の教室は昼間の賑わいが嘘かと思うくらい静かである。
たいてい人が残っていることはない。
…が、今日は違った。
珍しく教室に忘れ物をした黒子テツヤが教室へ戻ると、そこには彼女であるくれはの姿があった。
ガラッ
『ん?あぁ、黒子くん。どうしたの?』
「あ、くれはさん。…忘れ物を取りに来ました」
『へぇ、めずらし…』
そう言いかけて、急にそっぽを向くくれは。
そして…
『ふぇっくしゅ……ズズッ』
「風邪ですか?」
おっと失礼。くしゃみを一つ。
風邪ではないかと心配する黒子。
『うーん、大丈夫!』
「なんですかその間は…。ここ、寒くないですか?」
『言われてみれば確かにそうかも…。ずっといるからわかんないや』
「何してたんですか。…ずっと」
『ん?日直の仕事。もう終わったよ』
「そうですか」
うん、と笑顔で返事をするくれはを見て黒子も微笑み、彼女の方へ歩み寄る。
「くれはさん」
『何?』
「手、かしてください」
『…手、ですか?』
どうぞ…、と差し出された彼女の手のひらは、親指の付け根あたりまで制服の袖が伸ばされている。
見るからに寒そうだ。
そして、黒子がその手に優しく指をからめる。
『!…黒子く…////』
「そうとう寒かったみたいですね」
『え?』
「袖。伸ばしてたので」
『あ…』
黒子は、くれはの体温をしっかりと感じ取るかのように、キュッと彼女の手を握る。
「寒そうなわりに、手は温かいですね」
『えー、黒子くんの手が冷たいんじゃない?』
「そうですか?…でもそのおかげでくれはさんの体温伝わってきます」
『そ、そう?』
照れ笑いをしながら、握られた彼の手を優しく握り返す。
放課後の教室は少し寒くて、きみの手はこんなにも温かい。
**お題【確かに恋だった】様**
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