黒バス夢Book
□支えに。
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「スポドリ用意しておきました、各自水分補給はしっかりしてください。あ、緑間くん、テーピング解れてるわ。」
休憩時間、マネージャーの笹原は慣れた手付きで部員にスポドリを配る。
と同時に部員一人一人に練習のアドバイスだとか、テーピング解れを直したいから水分補給が終わったら来てくれ、など事細かに指示を出す。
「キャプテン、この後は自主練ですよね?1年生は基礎練をやりたいんですけどよろしいですか?筋トレ、走り込み、ドリブル技術の向上、シュート練を主にやりたいです。」
と、俺に声をかける笹原。
これだけ綿密に組まれれば断らざるを得ない。
それに俺も、1年は基礎からキッチリやるべきだと思っていたところだった。
「あぁ、好きにしろ。頼む。」
「それと先輩、筋肉に疲労が溜まっています。少し座ってもらっていいですか?」
言うなり笹原は手際よくパイプ椅子を用意し、俺はそこに座る。
「えっと、確か…」
「……ッ!?」
ぐっ、と笹原は俺の脹脛を親指で押す。
笹原は小柄で、決して力が強いわけではないが、鈍い痛みに思いの外疲労が溜まっていた事が伺える。
暫く指圧され、大分足が軽くなった。
「…すごいな、助かった。」
いえ、と短く答えると笹原は1年のところへ行き、練習の段取りの説明に取りかかった。
俺はふと先日入ってきた他のマネージャーを見る。
高尾やら宮地の一挙一動に騒ぎ立てるだけで何もしようとしない。
それでも不平不満を零さない笹原だけに仕事がいってしまっていて、このままでは笹原が潰れてしまうのではないか。
あの小さな身体で、マネージャーの仕事を全部背負い込んでいる。
そう思うと、途端に笹原が儚いものにみえた。