黒バス夢Book
□お堅い貴方。
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「後は頼む。」
そう言って引退したはずなのに。
3年の間に身についた習慣か、俺の足は自然と体育館へと向かっていた。
「…しっかりやっているな、皆。」
バッシュのスキール音、ネットを掠めるボールの音。
まだ引退して間もないのに、とても懐かしい。
「…あ、石田くんも見に来たんだ。」
声の方をみると、マネージャーの笹原が立っていた。
彼女も3年だから先日引退したばかりだ。
「あぁ。」
そう短く答えて、またコートへと視線を戻す。
予想はしていたが、やはり灰崎の姿は見えない。
「ンだよ未練たらしく見にきやがってよ。」
「………灰崎。」
見ると灰崎は制服姿で立っていた。
「てめぇらがヘボいせいで負けたんだろうが。」
・・・灰崎は確かに強い。
だが俺は、こいつのバスケに対する姿勢が許せない。
「練習に参加しろ。」
こいつに何を言っても無駄だと分かっていても、つい口を出してしまう。
「いーじゃんかよ、それよりてめぇ引退したんだろ?失せろよ。」
この減らず口。
目上の人間に対する態度。
俺はこいつが大嫌いだ。
「ちょ、ちょっと灰崎!石田くんに謝りなさいよ!」
なんて笹原は声をかけるが、届かない。
「もう!灰崎!」
「まて…、笹原!」
笹原は灰崎を追いかけて何処かへ行ってしまった。