カゲロウデイズ

□人造エネミー
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「……で、これで全部か?」



「はい。買い物客含めこのフロアのこちら側の人間全員です」



「へぇ。あ〜……休みだなんだで楽しいお買い物を満喫中だったろうに、残念だったなぁ。ホントついてないよあんたら」



無精髭のテロリストは不謹慎極まりない言い回しで、人質たちに吐き捨てた。








「……確かについていませんが、この状況をつくり出した人に言われるのは不愉快ですね」



「まぁまぁ、アオ落ち着いて」



「そうですね。……というかカノ、先ほどからなにをしてるんですか?」



「ん?あぁ。キドたちに近況報告しようと思って……」



携帯でメールを打っていたカノができたと呟いて、アオの方を見た。



「……なんですか?」



「いや、記念に1枚撮ろうと思って。アオも入る?」



この状況を楽しんでいるような笑顔のカノに、アオも悪ノリすることにした。



「そうですね。こんな経験めったにできませんし、帰ったらセトにでも自慢しましょう」



「よし決まり!!……撮るよ〜。はい、チーズ!」



写真を撮り終えたカノは、メールに画像を添付してキドに送った。








「とりあえず、現在の状況を把握しましょうか」



そう言うとアオは目を瞑った。



次の瞬間、開いたその目は赤く染まっていた。



「テロリストは全員が銃を持ってますね。銃をこちらに向けているのが3人、シャッターのほうに3人。もう3人の内1人が無精髭の男、たぶんコイツがリーダーですね。あれ、最上階にも1人いますね。……警察も到着したようですが、シャッターのせいで身動きがとれないようです。あ、キドたちは死角になっている通路にいますね。」



「……キドたちのようすは?」



「今は落ち着いているようなので大丈夫でしょう」



まぁ、今のところはそんな感じです、と言い、アオは一息着いた。目の色ももとに戻った。



「なにかアクションを起こそうにも、人質がいるのでは下手な動きはできませんね」



「そうだね。……お、なにか始まりそうだよ?」



カノに言われて目を向けると、無精髭の男が携帯電話を取り出した。



「あ〜テステス」



その声は男の口からではなく、デパートのアナウンス用スピーカーから大音量で流れ出した。



「お、聞こえてるな?え〜警察諸君、お勤めご苦労。一度しか言わないのでよく聴くように」



男の声が流れ出したとたん、シャッターの外の警察の交渉の声が止んだ。



「もうおわかりのように、このフロアは我々が占拠した。数十人の人質もまぁ今は無事だ。ーー今はな。で、簡潔に言うと要件は1つ。今から30分以内に10億円を用意しろ」



周りの反応など気にもせず、さも当然のことを言うように男は淡々と続ける。



「受け渡しは30分後この棟の最上階で行う。こちらからは1人、もうすでに受け取りを待機させてるんで、ヘリから落としてくれ。偽札だの発信機だのそこらへんは無駄だから止めるように。あとまぁわかってると思うがすぐに準備できないだの、人質の解放が優先だのってのが出た場合、ここにいる奴らはすぐに、全員、殺す」










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