え?俺の青春ラブコメはまちがってますか?

□どうやら比企谷八幡はくさっているそうです
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突然の来訪者に、雪乃は視線を俺から教室の戸に向けた。


「………平塚先生。入るときにはノックを、とお願いしていたはずですが」

「ノックしても君は返事をした試しがないじゃないか。それに、そこにいる朔田もしょっちゅう此処に出入りしているぞ」

「彼はちゃんとノックして返事を待ってから入ってくれます。今日は違いましたが、それに先生が私の返事を待たずに入ってくるんじゃないですか?」

「まあ、そうだったか?だが、それはさておき……………朔田」

すると、俺は何故か地面に倒れ伏していた。

まさに、刹那。

コイツ、まさかソニードでも使えるのか!?それとも黒い死礼装に身を包んで刀を振り回す死神の技を!?

「私の授業をサボるとは、実にいい度胸だなぁ?」

そういや、一時限目の授業は国語だったような?


「いや〜先生忘れたんですかィ?俺は大学レベルの勉強をこなしているので授業を受ける必要がないと、」

「それはつまり“俺は頭が良いから平塚先生のつまらない授業を受ける必要がない”と、そう言うことだな?」

「いや、どこをどうしたらそう解釈するんですか!?」

「お前の一字一句全てだ。凄いなぁ、流石は大学レベルの勉強をこなすだけの事はある。あれだけの言葉にそんな意味を込めることが出来るとは、」

「だから違うって言ってるでしょうが!?」


俺は束縛を解除して立ち上がり、臨戦態勢をとる。


「ほぉ?それは私への挑戦状と受け取っても良いのだな?朔田」

「どんなに理論文を述べようがどうせ先生はそう解釈するんですから、そう解釈してもいいっすよ。もう面倒くさい」

「それじゃ、ガンダムファイト、レディーゴー!!!」

「やめてください。話が進みません」





雪乃のたった一言で、先生の上がり過ぎたテンションは一気にマイナス0度以下まで下がった。すごいな、さすが雪乃だ。

そして雪乃は今までの話についていけていない男子生徒に向かって一言。


「それで、そこのぬぼーっとした人は?」

ちろっと冷めた視線を彼に送る。

つか、ぬぼーっとした人ってひでぇな。まあ第一印象を見て死んだ魚のような目、とか言った俺が言えることではないが。

「彼は比企谷。入部希望者だ」

比企谷と呼ばれた男は呆気にとられていたのか、数秒間があってから会釈をした。

「二年F組の比企谷八幡です。えーっと、おい。入部ってなんだよ」

どうやら、平塚先生に無理矢理連れてこられたらしい。先生が此処に人を連れてくるとしたら、それは一つの種類の人間だけだ。だから、おおよその見当はつく。


「君にはペナルティとしてここでの部活動を命じる。異論反論抗議質問口応えは認めない。しばらく頭を冷やせ。反省しろ」

なんつームチャクチャな。可哀想に、何があったのか知らないが哀れな奴だ。


「というわけで、見れば分かると思うが彼はなかなか根性が腐っている。そのせいでいつも孤独な憐れむべき奴だ」

確かに、見ればわかる。

「人との付き合い方を学ばせてやれば少しはまともになるだろう。こいつをおいてやってくれるか。彼の捻くれた孤独体質の更正が私の依頼だ」

「そんなの、進路指導室とかに連れ込めばいいんじゃないんすか?」

俺は制服に付いた埃を手で祓いながら平塚先生に告げる。

「残念なことに、彼はもう手遅れだ………」

「おい。何が手遅れなんだよ」

「………ご愁傷様」

「アンタも納得するな!」

比企谷君が吠える中、雪乃が面倒くさそうに口を開いた。


「なら、先生が殴るなり蹴るなりして躾ればいいと思いますが」

………こェよ。

「私だってできることならそうしたいが最近は小うるさくてな。肉体への暴力は許されていないんだ」

確かに、最近はモンスターペアレントとかいうなのが出てきたり、生徒が反抗して教師どもが怯えている現代状況。鉄拳正破砕などすれば教育委員会だとかに訴えられたりするんだ。

まあ最も、やり過ぎた暴力をした教師がいるからこういう事になったのだが、


「お断りします。そこの男の下心に満ちた下卑た目を見ていると身の危険を感じます」

雪乃は別に乱れていない襟元を掻き合わせるようにして比企谷を睨みつける。

気のせいだろうか、チラッと比企谷が雪乃の胸元を見たような…………?
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