「ハル!おいで!」

大好きなみんなが、ハルのことを呼んでくれる。

ハルはいっぱいいっぱいしっぽを振る。

嬉しくってウキウキしちゃうのは、「おさんぽ」と「ごはん」って言葉。

おさんぽは、パパとゆうくんとななちゃんと行くんだ。ごはんを用意してくれるのはママ。

だけど、それよりも嬉しいのは、
「ハル、大好き!」って言葉。

それよりもっと嬉しいのは、
「ハル、ずっと一緒だよ」って言葉。

それを聞くとね、何だかあったかくて、幸せな気持ちになれるんだ。


そうお話ししたら、一緒のお部屋にいたおにいちゃん犬が、外に向かって
「飯はまだか!」
って怒鳴っていたのをやめて、ハルのこと、にらんだ。

「お前、ここがどこだかわかってて言ってるのか?」

それくらいハルにだってわかる。

そんなに子どもじゃないんだもん!

「わかってるよ?」

そう言うと、おにいちゃん犬はハハッと笑った。

「じゃあ、どんなとこか答えてみろよ」

「…」

わかってるのに、答えることができなかった。

パパやママやゆうくんやななちゃんとお別れしたこと、まだ信じたくなかったから。

でもおにいちゃん犬には、ちゃんと知ってるんだってとこ、見せなくちゃ!

涙が出てきちゃいそうだった。

だけど、ハルは答えたんだ。

「どうしても家族と離れなくちゃいけなくなった犬たちが来るところ」

「俺には家族なんていないけど?」

びっくりしておにいちゃん犬を見た。

違うの?

どうしても家族と離れなくちゃいけなくなった犬たちが来るところじゃないの?

「やめなさい。まだこんな小さい子どもに」

ハルがここに来てから、ずーっとお話しを聞いててくれたおばあちゃん犬が、おにいちゃん犬にそう言った。

おにいちゃん犬はまだ何か言おうとしてたけど、ハルを見て、やめた。

またドアの外に向かって怒鳴り始めたおにいちゃん犬に負けないくらいの声でハルは言った。

「でもここに来た犬たちがどうなるかくらいは知ってるよ!?」

おばあちゃん犬とおにいちゃん犬がびっくりして、ハルのこと見たのがわかった。

「もしこのまま家族が迎えに来なかったら…ハルたちは殺されちゃうんでしょ?」

「ああ…なんてこと…」

おばあちゃん犬が目を閉じて、下を向いた。

「お前、知ってたのか?」

おにいちゃん犬はびっくりしてた。




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