SHORT-STORY
□あの日のmelody
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それは、
ある日の放課後だった。
「ちっ、何でオレが届けなきゃなんねーんだ」
オレは無性に苛々していた。
担任の野郎が放課後
紙の束を運べ、
なんて10代目に言いやがるから
「何で10代目に言うんだこの野郎!」
「じゃあ、獄寺。
お前が運びなさい」
思い出すだけで苛々が増す。
教室から渋々足を動かして、職員室へ向かっていたんだ。
「…ん?」
どこからか音楽が聞こえた。
廊下を歩くにつれ、だんだんとその音は大きくなる。
「…ピアノ…?」
一つの部屋の前でオレは足をとめた。
旧音楽室。
オレがこの学校に来てから、一度も入ったことはない。
帰りにいつも通る廊下なのに、
こんな場所があるなんて知らなかった。
綺麗で
透き通った音。
何故か懐かしくて、
オレは聴き入っていた。
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