SHORT-STORY

□特等席
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大きな噴水のある公園。

時刻は10時を5分程過ぎたところ。

いや、正確には8分だ。

待ち合わせにこの場所を選んだ本人を待ちながら、日陰にあるベンチにゆったりと足を組み座る。

昼前の公園は子供連れの母親だらけ。

噴水の水でキャーキャー騒ぐ子供は極力視界に入れないようにしながら、雲雀は溜め息をついた。

まだ寝ているのだろうか。

いや、愛実の事だから準備に時間をかけすぎて遅刻、といったところだろう。

それにしても…



「…はぁ」



10分もの遅刻なんて。

どうやって詫びてもらおうか。



タタタタ…



「き、はぁ、きょうやぁ…っ」

「僕をこんなに待たせるなんてね。
覚悟は…」

「ごっ、ごめんなさいっ…!
ちゃんと起きてたの!
でも、ほら…いろいろと準備してたら…その…」



語尾を弱める愛実。

雲雀は言い訳というやつが嫌いだという事をよく知っている。

オロオロと視線を左右に泳がせる愛実とは反対に雲雀は実に楽しそうだった。

遅刻の理由が予想通り過ぎて、可笑しい。

可愛いな、とも思った。



「キスしてくれたら、許してあげる」



ベンチの前に立っていた愛実の手を引き、顔を近付けると耳元で囁いた。

瞬間、真っ赤になる愛実を見て益々機嫌が良くなる。

これだから、愛実は側に置いておきたいと思うのだ。




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