フローズンティアラ

□2 再会
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 天井の高い大聖堂。流れる荘厳な音楽。王国の紋章をモチーフにした大きなステンドグラスから差し込む光と、王侯貴族ら数百人の視線を浴びながら、王女アリシアは聖壇の前で一人祈りを捧げていた。

 国が信仰する女神に黙祷を捧げた後、聖壇に鎮座しているレゼーヌ王国の国宝であるフローズンティアラを戴冠し、結婚式を挙げる。はずだったが、

「か、火事だー! 逃げろぉー!」

 たちまち上がる数々の悲鳴。確かに感じとられる焦げ臭いにおいに、パニックに陥る大聖堂。

「姫様!」

 護衛の三人がアリシアを外へ連れ出そうとする。

 ふと視界の端に、気になるものが映ったアリシアは聖壇の方を振り返った。



「……お姉さま?」

 ごく小さな呼びかけだったが、確かに耳に届いたらしい。しかしその人物は、アリシアの声にちらりとこちらを見やっただけで、すぐに人混みの中へと消えていった。



「ティアラが! フローズンティアラがありません!」

 衛兵が声をあげる。

「探せ! フェルディナンド将軍を呼んでこい!」

 レゼーヌ王国近衛アルディメント騎士団長のアレックスが、蒼白の衛兵に喝を入れるように怒鳴りつける。

「姫様、早くこちらへ!」

 護衛のモランがアリシアを急かす。しかそんな騒ぎの中でアリシアの頭の中に浮かぶのは、人混みに消えてゆく姉の姿。

 彼女は何かを持っていた。それは――。
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