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□DANCE
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「――――マジ?」

「もちろん、大マジよ」


明らかに含まれた嫌気には気づかなかったフリを決め込んで即答で返してみた。

上目遣いでちらりと目をやると、引き攣ったまま固まったアイツの顔。

言いたいことはわかるわよ。
無理とか、柄じゃないとか、そんなとこ。


「い、いや、俺には」
「無理とか言うんでしょ。わかってるわよ」
「っ…ι」

予想した通りの言葉は最後まで言わせてあげない。
だってだって、わかるけど、さ。
やっぱり、ね。

言葉を詰まらせ顔をしかめるアイツに向き直って、トドメの一言。

「アンタが嫌だって言うなら、他の人誘っちゃうけど、いいの?」
「なっ…!」

もちろんこれは本心じゃないけど。
他の人なんてまっぴらごめんだけど。

でもこれは最後の切り札。
ほら、嫌だなんて言ってられないでしょう?

あたしの言葉に眉を吊り上げるアイツ。
その顔を見れただけでこんなこと言い出したかいがあったかな、なんて。
あたしも相当やられてるかも。

「で、どうする?」
「ぐっ…!」

もう切り返すカードはアンタにはないはず。
少し黙って、それからため息。

あ、諦めた。
知ってるもん。最後にはあたしのわがまま聞いてくれること。

無言で立ち上がったアイツの背中に、わがままついでにもう一つ。

「あたしも、座ってるんだけど?」
「……………」

もともと細いのを更に細くしてあたしを見下ろすアイツの目。
これはダメかな。
さすがにきいてくれない?

「−−−−−ん」

少しの間の後、あたしの目の前に差し出されたのはアイツの手。

あ、やばい。

あたしきっと今すごく変な顔してる。

だってだって、

うれしい。

「−−ほらっ立つんだろっ!」

頭の上から降って来る声は怒気をはらんでいて。
でもあたしは知っている。

この言い方は照れ隠し。
見なくてもわかる。
今アイツの顔は真っ赤だってこと。

そして、

あたしの顔もきっと真っ赤だってこと。

あたしはその手を取って立ち上がる。



さぁーーー

参りましょう?





        
END.  


―――――――――――――――
チェスターは音痴だけどダンスはどうかなとふと思いました。
嫌がりそうだけどアーチェにわがまま言われたらきいてあげちゃうのかな、とかww

書き続けるとだらだら長くなりそうなので情景は書かずに止めました。
想像していただければと思います☆

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