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彼らは[ パッショーネ ]という組織の、暗殺を請け負う組員らしい。

中々大規模な組織らしく、他にも担当を持つチームがいるとのこと

…何か、もういいや
今更勉強する気もないし


ちなみに、私には殆どの時間を監視される人が付くみたい。

本当にざっくりとした説明をプロシュートさんにしてもらった。





…はぁ。

やっと1人になった部屋で、唯一の家具である椅子に腰掛けながら外を眺めていた。

部屋の壁に一つだけ設けられた窓。

両側には部屋があるため、扉を開けてすぐの真正面に窓がある。

そこから見える景色は、太陽が登り始め薄明かりに照らされるお隣の壁。

この建物の近くに隣家があるのだろう。
白い壁に反射した弱い太陽光だけが、この窓から見える景色の全て。

…もっとこう、見晴らしのいい、せめて緑の一つでも見たかったのだが

辺鄙な場所に住んでいるものである。


まぁ、嘘か本当か此処に住む人達は暗殺業らしいのでその辺を考慮してのことなのかもしれない。

結局、白髪の人が出ていった後残った3人も部屋から出て行き、扉の施錠の音を聞きながらいつの間にか朝を迎えていた。

一睡もできなかった。

暇つぶしに時々囁くように歌ったくらいで、後はぼうっと外を眺めていたら朝になっていたのだ

その間シロは膝の上でスヤスヤと寝息を立てている。

今何時くらいだろう…

本当なら、今頃ホテルで朝食のパンを貪っている頃だったのに…



お腹すいたなー、なんて思っていると突然扉のノックが聞こえた。

返事をするよりも先にガチャリと音を立てて開いた扉から、プロシュートさんが顔をのぞかせる

「おはようお嬢ちゃん、すこしは寝れたか?」
「おはようございます。まったくです。」
「そりゃあそうか」


彼は、はんっと鼻で笑って扉を開けながら部屋に入って来る

「さっそくで悪いが、メンバーを紹介したい。付いてきな」

私は霞む目をこすりながら、重い腰を上げた。



廊下に出ると、そこにはギアッチョさんもいた。髪が乱れていて、目つきも昨日より悪い…

寝てないのかな?

「…おはようございます。」
「…ん」

彼は不機嫌そうにそれだけ答えると、さっさと歩き出してしまった。

私達も彼の後を追う。


「ここは俺らが拠点にしている建物だ。他にも…何人だ?」
「…全員で9だ」
「そ、そんだけのおっさん共が仲良く暮らしてる」
「気色悪ぃこと言うなクソ」


一階がみんなの集まるリビング
二階と三階が、各自割り当てられた部屋
このアパートを建物ごと借りた、と言っていた。

地下室があるみたいだが、地下には行くなと言われた

…まぁ何となく想像はつく。
血なまぐさい匂いがしそうだし


右手を壁に添えながら階段を下りると、薄暗いエントランスに出た。
正面には両開きの大きな扉だ。

なんか外国って感じ。

出入り口であるその大きな扉を目の前に、左手側には部屋数ほどあるポストが壁に張り付いて並べられ、そのすぐ横にはアーチ型の扉。


ギアッチョさんとプロシュートさんが、扉ををくぐって奥の部屋へと入っていく。

へぇ、と眺めていた私は慌てて後を追った


中は思ったよりも広い室内で、右手にキッチン。奥は食卓みたいで、壁で区切られていないから見通しが良い。

なんて言うんだろ。
カウンターキッチンみたいな。

食卓の左はリビングみたいで、テレビとソファーがあった

入ってきた扉のすぐ左は部屋があるみたいで、壁で囲われてる。

ここだけリフォームしたみたいな跡があった。

簡要な防音パネルみたいな壁を組み立てて仕切られてるみたいで、他の壁に比べてここだけ新しい感じがする。


部屋を四分割すると、右下がキッチンで、右上が食事スペース、左上がリビングで、その下が作られた部屋って感じ

大雑把にだけど。



…まぁ、さすが男所帯と言うか

なんか、雑。

そこらに誰のものか分からない服と靴下。
散らかるゴミに、洗い物の溜まったシンク

部屋のカーテンは全て締め切られていて

それなりに掃除はされているみたいだが、高い所とか、隅っこの方には埃が積もっていた

(あー… なるほど。)

一瞬で悟った私は口黙る。


リビングにはソファに腰かけてテレビを見ている2人と、キッチンに1人、ダイニングテーブルに1人居た。
テーブルについているのは昨日の大柄の白髪の人だ。



「よぉお前ら、リーダーから話は聞いてんだろ。可愛い新人ちゃんだ、挨拶しとけ」

プロシュートは手をひらひらさせながらキッチン横の個室へと消えていった

閉まる扉の隙間からソファと机が見えた
書斎のような部屋かな


パタン

閉まった音だけが虚しく響き、賑やかなテレビの音しかしない

い、息苦しい。

唯一まともに話せそうなプロシュートさんが居なくなったこの空間に、私は耐えられそうな気がしない…

「…。」

ちらっと横にいる天パ…じゃなくてギアッチョさんを見ると
明らかにダルそうな顔をしている。

まるで子守を無理やり押し付けられたみたいな顔だ

「やぁ新人ちゃん」

はっと声のした方に視線を向けると、キッチンからマグカップを両手にこちらに歩いてくる男の人がいた

アシンメトリーに傾いたストレートヘアに、柔和な笑顔が似合う。

「君がリーダーの気になる人か」

目の前で立ち止まると、手にしていた片方のマグカップをついと差し出す

「僕はメローネ。コーヒーは飲める?」

差し出されたカップを恐る恐る受け取り

「ありがとうございます。なまえです」
「なまえちゃんか、よろしくねー」

彼はへらっと笑って横を通り過ぎ部屋を出て行った。階段を登って行く足音が聞こえる


「あの、ギアッチョさん」
「あ?」
「 9人いらっしゃるとか」
「…イルーゾォがいねぇな」

私の記憶は正しかったらしく、やはりこの部屋には残り3人が居ないみたいだ。

リーダーと呼ばれた白髪の人に
金髪美形のプロシュートさん
眼鏡の天パのギアッチョさん
パイナップルのペッシさん
コーヒーくれたメローネさん

椅子に座ってる2人と
あと2人…


「あそこで仲良くくっついてんのがソルベとジェラート、後は陰気なイルーゾォってやつと坊主のホルマジオだ。居たらそん時教えてやるよ。おら、これで終わりだ。俺は部屋に戻る」

早口に説明を済ますと、ギアッチョさんは踵を返して部屋を出てしまった

…何だその投げやりな感じ
そしてこの放置感

歓迎されてない事ぐらい分かっているが、あまりにもじゃないだろうか

私だって好きで此処にいるわけではない。



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