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伸びてきた腕にぎゅっと目を瞑る。

このままその腕で首を絞められるのだろう。


…死ぬときは死ぬとき、と言ったが
やはり怖くなって来た。

首に触れるまでの時間が、スローモーションのように感じられる。

こんなことであっさり死んじゃうなんて… 何てしょうもない生き方をして来てしまったのだろう。

こんなことならもっと遊びまくっておくんだった。自分に正直に、言いたいことは言って、たらふく食べて、シロといっぱい旅行して…

考え出したらきりがない。

腕が首に届くまで、ほんの少しの時間しかないだろうに、すごいスピードで思考と感情が流れていく。
…これが噂に聞く走馬灯というやつだろうか。



そう思いながら意識を首に集めていたのだが、最初に触れた感触は腕だった

そっと薄眼を開けると、目の前の大きな男は縛られていた両腕の麻縄を切っていた

特に刃物らしい影は見えなかったが、ぷつりと切れた紐から解放された腕で、もう片方の自由になった手首をさする。


「お前は今、死んだ。そしてこれから此処で生きるのだ。」

男はその調子で両足と腰の紐を切ると、くるりと背中を向けて部屋を出て行ってしまった


…へ?

事の転末が理解できず
ぽけっ、としていると

「良かったな。リーダーの御眼鏡にかなったみたいで」

金髪はつかつかと歩みを進め、天パの横に並ぶとにやりと笑った。

…はい?


天パはちっ、と舌打ちをすると「俺はまだ信用してねぇ」とぼやく

「ところでシニョリーナ。ペッシの野郎だが、元に戻してくれると助かるんだが?」

金髪がくいっ、と親指を指した先にはまだ震えているペッシさんの姿があった





――――――――



「…これで大丈夫だと思います」
「ありがとな」

金髪の、彼はプロシュートと言うらしい
プロシュートさんは感謝を述べた。

取りあえず彼の夢にもう一度入り、トラウマを遠ざけ平凡な、彼の安心する夢を引っ張り出してそれを見せた。
ついでにその夢に安心感を高めるため、彼の好きなものも混ぜておいた

ペッシさんは猫が好きみたい。

彼は今すやすやと眠っている。
シロもそんな彼の上で丸くなっていた


「あの、一体どういう事ですか?」

私は此処で殺されるものだと思っていた。
あの白髪の男に首を絞められ、こと切れた体はどこかに埋められるものかと

「俺らのチームに加わった、って事さ」
「もちろん監視付きだ」

天パ…じゃなくて、ギアッチョさんがだるそうに答えた。

「チーム?」
「その辺はまた追々説明していく」
「一つだけ言えんのは、俺らは汚れ仕事で食ってるチームっつー事だ」


汚れ仕事?
なにそのお先真っ暗な感じ…

つか、え?
私そんな仕事を生業にしてるチームに入っちゃったってこと?

ほ??



まだ現実についていけない

だって、私の将来は?
学校も辞めて?就職は?就活しなくていいの? てか、あれ?家族はどうなる?


まとまらない頭を抱えて、これだけは聞いとかなきゃ、と一つ質問をしてみる

「…お家に帰れない、って事…ですよね?」
「当たり前だろうが!てめぇは死んだんだよバーカ」


頭を金槌で殴られたみたいだ
治まりかけた頭痛がまた復活する

あぁ…お母さん、お父さん。
私、死んだみたいです。



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