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両手が塞がっているので足で扉を開けた。
バンッと勢いよく開いた扉は、その勢いで壁に打ち付けられ頼りなげに震える。
それを見ていたプロシュートは溜息をついた。
廊下の照明が、開いた扉枠から注ぎ込み開かれた部屋を照らし出す。
ここは長いこと使われていなかったから、辺り一面埃だらけで空気も篭っていた。
しかも今の扉を開けた衝撃で綿埃がむわっと辺りを舞う。
ギアッチョは鼻にしわを寄せた
プロシュートが入り口すぐ横にあるスイッチを入れると、部屋に明かりが灯る
部屋の中心に唯一置かれた一脚の椅子は、独特の雰囲気を醸し出していた
女を椅子に座らせる。
もちろんまだ意識がないので、ちゃんと座らせることはできないが取り敢えず背にもたれ掛けさせる。
車から運んできた体は思ったよりも軽く、少し拍子抜けした
自分を一度欺いた女だが、こう軽いと乱暴に扱えない
予め持って来ていた麻縄で腰のあたりと手足を椅子に括り付ける。
本当は売人の男を、金庫のありかを聞くために使おうと思っていたが…
違う形で役に立った。
ペッシは猫を肩に乗せて、女の荷物を部屋のすみに置く
あの猫は怖がることも逃げることもせず、ジトッとした目線をしながらペッシから離れないのだ。
払いのけようとするたび凄い勢いで噛み付こうとしてくるので、ペッシは怖がって何も出来ずにいる。
まぁ、もしかしたらこの女の人質?として役に立つかもしれないし、無理に引きはがそうとはせずそのまま連れてきた
荷物はというと、身分を確認する他、私物からおおよその性格や目的が分かる。
面倒だがあのホテルに長居もできなかったため、そのまま持ってきたのだ。
女を縛り付けるのを確認した後、プロシュートはリーダーに報告をと部屋を出て行った
パタンと扉が閉まる。
1つしかない電球に照らされたこの部屋で、女と俺とペッシと一匹が残された。
ここは俺達のアジトだ。
各それぞれが自分の部屋を持っていて、一緒に生活している。
まぁ強制はされていないのだが、何かと一緒な方が便利なことが多い。
連絡だって迅速だし、家賃だ公共費だ煩わしいもんは全てリーダーに任せられる
チームの連中に頭にくる事もあるが、住んでるメリットを考えれば少しは落ち着けるもんだ
そのアジトの中で一室使われていない部屋がある。今回はそこを使わせてもらった。
3階の真ん中の部屋。
両隅はすでに俺たち個人の部屋だ。
向かい合わせる様にこの部屋を出た目の前にも3室あるが、そこも然りだ。
俺の部屋の隣ってのが気にくわねぇが、まぁ空いてて、監禁の効く個室となれば仕方ない
なぜアジトに連れてきたのかといえば、リーダーの御達しだ。
なにを考えているのやら…
拷問ならどっかの空き家とかでちゃちゃっと済ませれるのに。
こんなど素人相手に時間はかからないだろう
少し指を折るだけでも泣きわめきそうな顔だ。わざわざ運んでくるほどでもない
「おいペッシ、その猫何とかならねぇのか」
「いやそれが…ゲージに入れようとはしてるんだけど」
すばしっこくてダメなんだ、と頬を掻いた。
困った風には言っているが、まんざらでもなさそうだ。顔が緩んでるし
ちらちらとその白いのが視界に入って気に食わないのだが…今のところそれ程害はねぇし放って置くことにした。
視線を女に向き直し、しゃがみこんで俯いた女の顔を覗き見る。
まだ眠っている様だ
此処らでは珍しい黒髪に黒い睫毛…
改めてよく見てみれば、まだ10代か?
プロシュートに嗅がされたあの薬は普段使うよりは薄めてあると言っていたが、まだ起きる気配はなさそうだ。
…とにかくリーダー命令だ。
殺害でなく生け捕りにしろと言われたのだ
どうも気になるらしい
何故金庫の場所と番号が分かったのか。
俺たちですらその情報は掴めなかったのだから
女の泊まっていたホテルは、組織の息がかかった所だ
宿泊客である女の情報をホテル側に出させて調べてみたが、特に怪しい点はなかった。
他にも何かしらのデータベースに引っかからないかと調べて見るが、どれもハズレ。
ここに知り合いのような繋がりのある人物もいないし、今日イタリアに着いたばかりだという一般人。
本当にただの旅行客らしい。
そんな女が何故金庫のことを知ったのか。
そして俺とプロシュートが意識を飛ばした何らかのトリックも暴かなくては
とにかく謎だらけだ。
手荒な事をしても吐かせる。
きっと俺かプロシュートの顔のわれてるどちらかが担当することになるだろう。
キィ
背後の扉が開いた。
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