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いや、怪しいだろ。
今夜中の3時だぞ?
部屋の掛け時計をちらりと確認する。

恐る恐る扉に近づいた

嬉しいことにドアスコープがあるので、そうっと覗き込もうとしたら…

「捕まえた」

ちゃぷっ
突然扉に釣り針が現れた。
まるで扉が水面のように波紋を作って、釣り針の下半分がそこから覗いている

あっけに取られていると、それは勢いよくこちらに飛び出してきた

扉を貫通して出てきた釣り針は糸もセットに、まるで生き物のように襲いかかってくる


私は咄嗟に後ろに飛び退き、腕でガードしてみるが

その釣り針は私の右腕に溶け込むように中へ沈んでいった

表面に引っかかるのではなく、まるで体の中身に食い込んでいるように感じる


右腕に食い込んだ釣り針は、引っ張ってみてもびくともしない!

「シャー!」

背後からシロが飛びかかってきて、釣り糸に食らいつくが無駄だった

鋼のように頑丈で、そして柔軟

何度も飛びかかってくれるのだが、ぶら下がることしかできず虚しい


(もしかして、スタンド攻撃?!)


バキィ!
はっ、と音の方を見れば扉が蹴破られていた

目の前には特徴的な緑の髪型をした、体型の肥えた男と

「みーつけたぁぁ」

にやぁ、と笑った狂犬みたいなあの赤眼鏡の天パ男が蹴破ったままの姿でそこに立っていた…


「お前、逃げようとしてたんじゃぁねぇだろうなぁ? みょうじ なまえよぉぉ」


げ、名前ばれてるし
シロが私の足元で眼鏡に向かってゴロゴロと威嚇している


〈 知り合いか?〉
「ちょっとね…」

頭に話しかけてきたシロに小声で答える。


後ろに逃げたいが、釣り糸がぎりっと突っ張って身動きが取れない

「動くと肉が取れるぜ」

まるでパイナップルのへたのような髪型の男は、どこか自信なさげに脅してきた

「俺に嘘の名前まで使ってよぉぉタダで済むと思ってんのか?」

天パが品なくせせら笑う
あのドヤ顔腹立つなぁ


「あの、もしかして私…死んじゃうやつですか?」

まだ話の通じそうな緑の…いや、もうパイナップルにしよう
パイナップルの男に聞いてみる。

パイナップルは自分に聞かれるとは思ってなかったのか、視線が泳ぎだした

「お前次第だ」

天パが代わりに答える。


(もう一度スタ「スタンドでも出してみろ。それより早く俺がお前をブチ割る。」

思考を遮られ、さらに威嚇されてしまった

これはちょっとしたモーションでも殺されるやつだ…


また嫌な汗が出てきた

(くっそ…全部あの売人のせいにしてやる!)

シロも何か感じ取っているのか、動きたくても動けないように見えた



嫌な沈黙が辺りを占める


糸を張ったようなきりきりした空間に胃液が出そうだ…
この感じだと下手なことも言えない

どうしたものかと考えていると、背後から突然あの金髪の男が現れた


「っ?!」


私に何をするでもなく横を通り過ぎ、天パに何か耳打ちした後
肩越しにこちらを見る


な、何で後ろから?!
窓から入って来たの?

それに…3対1だ…
さらに逃げる見込みがなくなった

絶望に固まっていると、金髪の男は私に近寄り手を伸ばせば届きそうな距離まで来ると


「こんばんはシニョリーナ」

気軽に挨拶してきた。


「……。こ、こんばんは」

一応返す。
いや、イケメンだからとかじゃないよ?

この人には私を殺そうとする気が感じられなかったからだ。目は笑ってないけど
丁寧な対応にも、少し安心する


「あの天パに何言われたかは知らないが、俺たちは君を殺さない」

突然告げられた救済宣言に、はっと視線を合わせる

金髪の男はにっと笑うと「ただ、付いて来てもらう」

ぐっ、と何かが口元に押し付けられた

布のようなもので塞がれ、払い落とそうとするが自由の利く左腕を掴まれそれができない

布から吸い込んだ空気はなんだかマズイ味がして、何これ
と思う頃には意識を手放していた


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