short

□似てる
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俺はフーゴの奴に置かれてる彼女の手を見て、少し眉をひそめた

何だかなまえの行動が、自分がやってるみたいで不思議な感じがする。

それほどにそっくりだと言う訳なんだろうけど…


だからって、それだけで機嫌が悪くなったりしない…


何だか… 良く分からないのが嫌なのだ。

子供みたいに騒ぎたくなるのをぐっと堪える…


(何だぁこれ?)

彼女を見てるときは、今日会ったばかりなのに随分親しい感じがする

なのに彼女の視線が他の奴に向けられていると、酷く不機嫌になってしまう…

自分とそっくりな姿で、聞きたい事だって沢山あるのに
何故か目を合わすことも、話し掛ける事も出来なかった


よくわからない感情を黒々と渦巻かせていると、ふとなまえと目が合う


なかなか顔を上げない彼に、戸惑っているみたいだった。

俺はなまえに気づかれないように、すっと視線を外す


「…おーい、フーゴ。なまえが困ってるじゃねぇか」

頬杖を付きながら、助け船を出してやることにした。

…内心では先程なまえと目が合ってしまったことに焦りつつ、顔には出さないように気をつけている


フーゴはむすっと顔を上げ

「元々は君のせいなんですがね」

「はぁぁ!? 何で俺なんだよ!」

「君が彼女をみて大声を出したんだろう?」

「…そ、それは」


言葉に詰まった。

確かにそれはそうだが、どんな奴だって自分とそっくりな奴がいたらきっと驚きもするだろう。

(そうだ、それで驚いたんだよ!)


そう言い返そうと、口を開きかけたら
品を持ったウエイターがタイミング悪くやってきた

渋々ながら口を閉じる

フーゴはふんっと、偉そうな顔をした…











何だか雰囲気がぴりぴりしたまま昼食を終え、私は家路についていた

家まで送ってくれると言う彼らの申し出をそっと断り、なぜかフーゴと番号を交換して別れた。


…まぁ、怪しい人じゃないみたいだし
大丈夫だよね?


しかし、なまえには一つ引っ掛かる事があった

(…ナランチャって子と、あんまり話し出来なかったな)


そっくりな姿の彼を思い出すと、もっと話し掛けておけば良かった…
と、今更ながら少しだけ後悔した










「ナランチャも奥手ですね」

「…何のことだよ」

「気になってたんでしょう? なまえさんの事」

「は、はぁ!?」

「バレバレですよ、これだから単細胞は…」

「誰が単細胞だよ!」

「番号も聞けなかったんですから… 残念ですね」


横を歩くフーゴはニヤリと笑った

それにナランチャは、ふつふつと顔色を赤く染めていく


「も、もしかして… 知っててなまえの番号聞いたな!?」

「…何の事です?」


フーゴは上機嫌で歩調を早めて歩く

ナランチャは子供のように地団駄を踏んで、彼の携帯を奪おうと必死になった

そんな彼を下目に、身長差から自らの携帯を高く掲げ余裕の笑みでくすくすと笑うフーゴ



まるでじゃれあっている猫みたいな二人をよそに、何も知らないなまえは「くしゅっ」と、不思議そうにくしゃみをした





 「似てる」


(俺とそっくりだったから、気になってた訳じゃ無いんだ!)


 
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