short

□無彩色
1ページ/2ページ



「だから言っただろ!」

「…すみません。」

休日であるにも関わらず、アジトにはなまえの憮然とした返事と、プロシュートの怒声が響いていた


こんなに綺麗に晴れた日なのだから、暢気に外でランチでも取りたいのだが…

どうやらそんな暇は無い様だった。



俺は顔に青筋を立てて怒るプロシュートとなまえの間に立って仲裁という立場にまわっていた。

扉を挟んだ向こう側の廊下には、そんな俺達を興味深げに観察しているチームの奴らが居る


(見てるだけなら手伝ってくれても良いのだが…)

意外と薄情なあいつ等に、心なしか溜息が出て来る


「何度も言うようだがなぁ…」

「まぁ落ち着けプロシュート。なまえも他意があった訳では無いんだ」


ちらっとなまえの方を見れば、やはり不機嫌そうに眉を寄せる姿があった。

何か言いたげな目でプロシュートを見上げている。


身長差のため、見上げるしかないのだろう…

そんな彼女に、これでもかとプロシュートの高圧的な視線とがぶつかり合っていた





チームの中で一番若く、新人であるなまえはよく失敗を起した

スタンド能力は凄いらしいのだが… どうも性格が暗殺向きで無い。


何故此処に配属されたのか

俺は常に頭を悩まされていた…。





「今日も怒られてるな… なまえの奴」

ペッシはおろおろと扉の隙間から、険悪な雰囲気の2人を見つめていた。


それに対し「何もそこまで怒らなくてもな」と、イルーゾォは飽きれた様に呟く


この状況の中、そうノコノコと2人の居るリビングに乗り込める程
2人は度胸を持ち合わせてはいなかった

ペッシ達は仕方なく廊下にて静まるのを待機しているのである。


「それにしても、中々の根性だよねぇ」

場に合わぬ口調で、メローネは素直な疑問を零した。


「此処に来て、毎日怒られてるだろう? 良く泣かないよなぁ」

「確かに… そう言えばそうだね。」

「んな事どうでも良いだろ! 何時になったら入れんだ、クソッ!」


イルーゾォは思い出したように同意し、端から興味の無いギアッチョは イライラとその場で足踏みをしていた。

「…なまえの泣き顔か。最高にベネだろうな」

「変態は黙ってろ!」


ニヤニヤと笑うメローネの背中に、ギアッチョの容赦無い蹴りが入れられる…




−−−‥



なまえの部屋にて、俺は彼女のベットの端に腰掛けながら
隣に同じ様に座る彼女に向かって慰めの言葉をかける

「…そう落ち込むな」

「落ち込んでません」


しかし彼女は以前と表情を緩めることなく、ぴしゃりと言い返してきた。


先程の件では、なんとかプロシュートに気を収めてもらい見逃してもらったのだが…

俺は何度目かになる溜息を吐く。


と、それに気付いたのか

「…もう大丈夫です」

なまえは顔を伏したままぼそっと囁いた。


確かに先程より気は落ち着いている様に見えなくも無いが…

「そうか。」

俺はこれ以上なまえの部屋に居続けるのもどうかと思い、
ゆっくりと腰を浮かせ部屋を出て行こうとした。


すると

「…やっぱ待って下さい」

服の裾をついっと引っ張られ、引き止められる


俺は何も言わず、浮かせた腰をもう一度静めた。


少しの沈黙の後、


「…私って向いてないですよね。」

なまえにしては珍しい弱気の言葉が聞こえた。

話の続きを待っていると


「色々と失敗ばかりだし、チームの皆から怒られるし、今回のだって…」


午前のプロシュートに怒られてしまった経緯は、最後のとどめをなまえが殺れなかった事だ。

後ろから殺すのが嫌で、躊躇っているところを逃げられてしまったらしい。



なまえは鼻をすすりながら、長い溜息を吐いて近くのクッションを引き寄せ顔を埋めた。



今回のなまえは見た事無いほど落ち込んでいる。

凄く寂しそうであり、とても儚げだった…



 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ