short
□聞こえない
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良く晴れた日の事。
俺達のアジとに見知らぬ女が居た。
アジトで唯一のソファーに腰掛け、近くの窓からじっと外を見つめている。
その女の後ろにはリーダが居た
俺はついでにと寄って来てしまった事を後悔しつつ、リーダに向かって舌打ちをする
「あぁ、ギアッチョか」
「…誰だこの女? お前の女か?」
ふん、と鼻で笑いながら 俺は少し離れた椅子に腰掛けた。
しかしリゾットは眉一つ動かす事も無く「そうじゃない」とあっさり否定されてしまった。
(相変わらず面白くねぇな、クソ)
「こいつはなまえと言うらしい」
「…らしい?」
女が居るだけでも違和感あり過ぎてイライラしてるのに、更にそんな曖昧な事を言われたら余計にイラつくではないか…
「何だそれ」
「新しく配属された仲間、と言う事だな」
「そいつが仲間になるだと!?」
驚きに目が見開き、声が多少上ずってしまった
女を見ると、全く気にした様子も無く外を見続けている…
何とも冴えない雰囲気だ… 虫も殺した事が無い様な顔をしている。
こんな本でも読んでそうな奴が[暗殺]等という、重っ苦しい場所へと配属だと…?
「俺は反対だ!」
吐き捨てる様に否定した。
第一、女を傍に置いた所でろくな事にならねぇ。
ぎゃぁぎゃぁ鳥みたいにうるせぇし、文句ばかり垂れやがる。事あるごとにはガキみてぇに泣き出すだろうし…
それに、此処に居ればメローネにとって格好の餌食だろう。
色々と不満を溜め込んでいると
「分かっている。」
と、何の感情も篭らない声でリゾットは返して来た。
睨み付ける様に話の先を催促してみると、少しの間の後 静かに語りだした。
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なまえと言う女は、あるチームの娘だったそうだ。
父親は殺され、残ったあの女も殺されそうになった所を 無意識にスタンド能力を使い無事その場を乗り切ったそうだ。
その話を目敏く聞き付けたボスは、何とその女を自らのチームに迎え入れ、今こうして新しいチームに収めたというが…
一連の話を聞いた俺は、まるで人形みたいに微動だにしない女に声をかけた
「…おい」
女は此方を見ようともしない。
聞こえていないのか…?
「おい!」
さっきから積もったイライラが呼ぶ声に滲む。
怒声の様な呼びかけにもまったく答えた様子の無い女に、俺の何処かの線が切れた音を聞いた
「おい、って言ってんのが聞こえねぇのか!」
ついに立ち上がり、ずかずかと窓の外を見つめ続ける女に対し乱暴に肩を掴んで顔を向けさせる
すると まるで怯えた様に肩を大きく震わせ、驚いたとでも言いたそうな丸い目で見つめて来た。
まだあどけなさの残る顔は、驚かされた様にきょとんとしている…
(…マジに聞こえてなかったのか?)
自分の顔が怪訝に曇って行くのが分かる
暫く妙な沈黙があったが…
「あぁ、言い忘れていたがなまえは耳が聞こえないらしくてな。 話しかけても無駄だぞ」
また顔の一つも動かさずにしれっと言いのける。
俺の頭の線がまた一本切れた
「そう言うのは初めに言えよ! クソッ!」
…しかし、これで先程の大げさな反応にも理解がいった。