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3人は目を丸くした。

突如降りて来た彼女は、真っ黒な髪をしていて背中までなびいていた。

頭には白いイヤーマフをしていて、マフラーも巻いている
多分寒がりなんじゃないだろうか、今日そんなに寒くないし。


口元はマフラーで隠されていたが覗く二つの眼は大きく、黒くて、涼しげな目元だった。

スタン達がよく見るのは、色のある虹彩で艶やかな黒光りする目はとても不思議で、すこし怖く思えた。


女子には珍しい黒いジーンズスタイルにスニーカー。
厚手の上着を着ていて、男子のように両ポケットに手を突っ込んだまま歩く。

髪の毛さえ隠していれば、男子に見えなくもない感じだった

多分、見ただけしか分からないが少しツンとした大人しそうな子だろう。



そんな彼女はたった50m先でぽけっと見ていたスタン、カイル、ケニーに気付くことなく柵の入り口を超えて、新しい家へと入っていってしまった。

目で追ったまま、消えた入り口辺りを三人は暫く見ている…

と、ケニーの「…もご(可愛かったね)」の一言ではっと我に帰った



「…な、何だよ!! 女子じゃねぇか!」
「…ほんと、びっくりした」
「もご!(可愛い子だやったぁ!)」

スタンはあたふたと、カイルはまだ驚きが抜けない。
ケニーに至っては女の子だった事に嬉しくて踊りだしてしまった。









「なぁ、どうするよ。…女子だった場合なんて考えてねぇぞ」
「スタン。別に女の子でも良いんじゃないか? 最初だけ仲良くするとかさ」
「もご(僕はずっと仲良くしてたいけどね)」

それぞれ頭を抱える。

三人はカイルの部屋にて話を整理することにしたのだ。

あのままさっきの場所で突っ立っている訳にもいかないし、丁度カイルの部屋から彼女の家が観察できると知って移動したのだ。

この部屋の窓は道路側に面している。
だから道路を挟んだ向かい側の左斜め前に見える家が、例の彼女の家だ。

先程ちらりと確認すれば、荷物の運搬も終盤らしく行き来する人影が少なくなっていた。


三人で腕を組む中、そこではたと気付いたケニーが首をかしげる

「もご?(そういえばカートマンは?)」

カイルは眉根を寄せると嫌味たっぷりに「どうせまだにゃーにゃー歌ってんだろ」と言い捨てた。


「にしては遅すぎないか? あいつが一番乗り気だったじゃないか」
「もご(確かに)」


そうだ。確かに日本人の引越しに1番興味ありげだったのはあのカートマンなのだ。
わざわざバスケットの予定を取り止めてまで見に来たのに、肝心の本人がいないとなれば…

カイルはハッと思いついてしまった。



「ッ!! あのでかっ尻、抜け駆けしようとしてるんじゃないのか!?」

そう言うや否や、窓に駆け寄り彼女の家を見る


残った二人は目を合わせると、のそのそとカイルの横へついた



窓から見えるのは帰る支度を整えている引っ越し業者の人達と、玄関口でそれを見送ろうとしている日本人家族だった。

運搬が終わったのだろう。
最後の業者が中に乗り込むと、二台のトラックは帰って行った

特にカートマンらしき人影は見当たらないが…

「もご。(いた)」
「「どこ!?」」

ケニーは目敏く日本人隣家の、車の陰に隠れているカートマンの姿を見つけた。
どうやら様子を伺っているみたいで、手には何やら細長い物を持っている…


カイルはおもちゃ箱をひっくり返して双眼鏡を取り出すと、ピントを調節しそれを確認する

それは花であった。
一輪の黄色い花を紙で包んだものか

花屋さんで買うようなやつじゃなくて、多分何処かそこらで摘んで来たのだろう…



「Dude!! やっぱりだあの野郎! 花なんか持って、僕達より先に仲良くなろうとしてるなんて!」
「なんだって! 女子だけど俺達より先なんて許さないぞ! そもそも俺の考えだ!」
「もご!(そうだ! 僕達が先だよ)」

3人はそれぞれに不満をぶちまけると、合図もなくカイルの部屋を駆け出した…


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