luce
□悪霊払い
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私の家は可笑しい。
笑える、って意味ではなくて
笑えない方の可笑しいである。
何が、って。
突然だが「あなた悪霊が憑いてますね」って言われたらどう思うだろうか?
確実にこちらの頭がいかれてると思われかねない。私もそう思う。
心霊番組だってほとんどやらせだろうし、出て来る霊能力者もどれもこれも胡散臭い奴等ばかりだ
この前ちらっと見た、そのお祓いコーナー?みたいなのでは、このご時世に邪馬台国の卑弥呼みたいな格好をした女が
訳の分からない事を叫びながら、狂ったように玉串を振り回してるのを見た時は正直寒気がしたくらいだ。
なのに私の家… 正しくは家系だが
先祖代々「悪霊払い」を生業にしている。いかれた家系だ。
じいちゃんも、ばあちゃんも、おやじも、おかんも、親戚も。皆んな口を揃えて「それが責務だ」と事あるごとに言ってくる。
もう耳が痛い。
みょうじ家みんなが、その「悪霊払い」とやらを出来るわけではない。
どうやら一番目の子がその責務とやらを負わされる決まりらしい。
その証拠に払う技術と言うか、能力的なものは確かに一番目の子にしか現れない。
正しく、私のことである。
「悪霊払い」と聞けば、恐らく数珠を持った袈裟かなんか着た人達が「えぇい」と意気込んで背中かなんか叩くのだろう
そんで「この人は辛い過去があって…」と悪霊さんのプロファイリングを始めるのだ。
私の偏見が詰め込まれた説明で申し訳ないが、多分合ってる。
だが残念なことに
私はそこに当てはまらない。
何故ならもっと胡散臭い方法で悪霊払いを行うからだ。
方法は至って簡単。
まずそこら辺の一般人を用意します。私がその人の体に触れます。私がその人の中に入ります。悪霊を払います。以上。
…と、紹介を締めくくりたいが
まぁ分かるまい。
私だって数珠とか持って先祖代々伝わる経文か何かで「きぇぇ」とか奇声をあげて払いたかったよ。
しかしそうも行かず、私の家系は人様の体を借りて悪霊払いをすると言う大変面倒迷惑極まりない方法で行ってきたのだ。
自分の意識を他人様の中に憑依させ、その体を一時的に自分のものにする。
その間その人の意識は眠りに落とすことも出来るし、共存することも出来る。
勿論ただ違う人になりすますだけでは意味がない。その人の持つ特性を最大限に生かすことができるのが唯一の良いところだ。
例えば腕力の強い人であれば弁慶のような怪力の御仁になれるし、ガンシューティングが得意なもやしっ子でも百発百中の次元大介みたいになれる。
そんな能力を生かして私達は悪霊を払ってきた。
そんなんだから世間から目立たず、ひっそりと存続して来れたのだ。
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