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(カートマンめ!絶対許さないぞ!)
自分でも何故ここまであいつに怒っているのかよく分からない。
確かに転校生の、日本人のカードは強い。スタンの言う様にしばらくは学校の人気者でいられることは間違いないだろう。
なのに、どうしてここまであいつが憎いのだろう。
憎たらしいのはいつものことだ。
挨拶の様に僕のことをユダヤ呼ばわりするし、事あるごとに僕に絡んで来ては神経を逆撫でするようなことを言って怒らせる
まるで怒る僕を見てあいつが楽しんでると思うとムカムカしてくるし、時に見せる残酷極まりない非道にも軽蔑すら覚える。
あいつには一線引いて来たし、交わる気もない。
とても不愉快だ。
たかが先を越されただけではないか。仲良くなるくらいなら今からでも遅くはない
なんにせよ、学校で知り合いです。感を出せればそれでいいのだから
自分には何故カートマンにいつも以上の怒りを覚えるのか…よく分からない。
切り捨てればいいだけのことなのに、頭では分かっていながら中々気持ちが切り替わらない…
(きっと、相手が女子だからよく分からないだけだ)
女子は本当によく分からない。
キャーキャーと喚いては口だけで行動に出ないし、可愛いと言いながら陰でけらけらと笑っている。
この前だってベーベの奴が年上と付き合ったって噂は聞いたが、本人の口から出て来るのはその彼の悪口ばかり
(見た目だけで中身は空っぽ、子供っぽくてすぐ腰を振って来るのよ?嫌になっちゃう…)なんて。本人が聞いてたらどうするんだ
僕ならショックで二度と会えない。
それに、ふわふわしたものとかユニコーンとか虹とかキラキラとかお人形遊びとかそんな物のどこがいいのだろう?
断然僕たちの方がもっと楽しく遊べる自信がある。
川に釣りに行ったり、サッカーとかバスケとか、ギャリソン先生の椅子に噛んだガムを置くとか最高じゃないか
あぁ、僕にはさっぱり分からない。
もはや別の人種だ
だから今回のことも上手く説明がつかないだけかもしれない。
そう思う事にしよう。
僕は一つ深呼吸をすると
「あの…」
「うわぁぁ!」
変な声が出てしまった!
慌てて視線を合わせると、そこには少し困った顔の彼女がいた。
「さっきは、その、挨拶が途中だったから」
彼女は薄く笑うと手を差し出して来た。
僕はそれをほう、と見ていると
「あ、ごめんなさい。聞き取りずらかったかな?」
と今度は発音に気をつけて先程と同じことを繰り返した
そんな彼女を見ていたら、なんだか可笑しくてふふっ、と笑ってしまった
彼女はさらに恥ずかしそうに顔を赤らめたが
「ごめんね、ちゃんと聞こえてるよ。挨拶、途中だったね」
と自己紹介を続け、僕も手を差し出した。
女子に握手なんて
そういえば初めてかもしれない
彼女は聞こえてたの、と片眉を上げたが、ころりと笑って握手を交わした
包んだ手は僕より少し小さくて、すべすべしていてちょっと冷たかった
「寒いなら暖かい場所に行こうか?」
「…そうだね、ありがとう」
彼女は最初に会った時よりも幾分表情も和らいで見えた
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