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俺は窓枠に手を添え、ゆっくりと慎重に手前に引く。

あらかじめピッキングはペッシに任せておいたおかげで、難なく開いた。

背丈よりも高い窓は、人一人通れる隙間が出来たところで止まり、手を下ろした。

「おい」

プロシュートに合図を送ると、奴はスタンドを現し窓の隙間から静かに中に入って行った

(待ちに待ったぜぇぇこのクソ野郎がよぉぉぉ!たっぷりお礼をしてやる)

ニヤリと笑みを浮かべた。


今回の任務は、回収が重要案件だ。
生死は問わないが、それを聞き出せなければ意味がない。

何を回収し、聞き出すかというと
男の隠し金庫だ。

だが金庫の存在は確実なのだが、どこに隠されているのかが分かっていない。

張り込みでもして観察していれば、いずれか開けるときが来るのだろうが… 今回は時間がなかったのだ

依頼主はその事について知らない。

ただ自分のテリトリーで勝手に売りさばいていた男の存在が気に食わなかっただけだろう。
だから痛めつけてどこかに厄介払いして欲しい、聞かなければ殺しても構わない。というのが本当の依頼内容だ。


だが殺すだけにしては、男のその金庫を手付かずに放って置くなどもったいない!

知らないのなら俺たちが貰う。
教える義務もないし、怒られる理由もない

ありがたく使わせてもらおう。

ちょっとした臨時収入だ。
これがうまく言ったら少し良いところで飯でも食おうか…


っと、話がずれた。

だからそんな大事な金庫を回収するべく、先にプロシュートの奴に行ってもらい、話が通じるか様子をみる。

それが出来なければあいつのスタンドで身動きを取れなくして、俺の出番だ。

どんな手を使っても吐かせてみせる。

最後にとどめを刺せばこの仕事は終わりだ。
ペッシのスタンドで下に降りて、用意したバンに乗り込んで帰るだけ

簡単な仕事だ。
ペッシも入れて3人だ。
失敗する方が難しいだろう。




俺は静かに息を吐いて、耳に神経を集める
小さな物音も逃さないようにだ。

プロシュートの奴が何らかの合図を送って来るはずだ。

男の身柄を確保して、逃げられないようにした後俺が行く手はずになっている



(…手ぇかかりすぎじゃねぇか?)

プロシュートが中に入ってから5分以上は経っている気がする…

たかが男一人だ。
なにをそんな手間取っているのか?


俺はそっと窓を抜け、窓ガラスとカーテンの隙間に身を潜める。

閉じられたカーテンの隙間から、そうっと中を覗くと…
其処には女がいた。

しかもプロシュートの野郎が床に倒れてやがる


(……?! どういう事だ?!)

一瞬なにが起きたのか分からなかったが、後ろからペッシか入ってきた事で気が逸れた

「っ!おいペッシ!まだ合図は来てねぇだろうが!」

小声で怒鳴るとペッシはひっ、と悲鳴をあげてまたバルコニーに戻って行く


(…とにかく落ちつけ。
あのプロシュートが簡単に殺られる訳がねぇ。)

ひとつ深呼吸をすると、改めてカーテンの隙間から状況を見直す。

野郎のうつ伏せになった胸のあたりが微かに上下していた

…死んでいる訳ではないみたいだ

残念なのか、喜ばしいのか
よく分からないがまぁ良かったとしておこう


プロシュートを見下ろす女の顔には見覚がない。
仕事柄、裏関係の奴らの顔は覚えているつもりだが、どう思い返しても知らねぇ顔だ

それによく見ればアジア系だ。

平たい顔に、黒い髪と黒い目。
背も低く、カタギにしか見えない…
歳だってまだクソガキじゃねぇか

女の顔にはまだ幼さが残っているように見えたからだ。

一瞬気が抜けそうになったが、慌てて思い直す。

じゃぁ何でそんなひ弱そうなクソガキに、プロシュートの奴は床に倒れてんだ?


…ここで出て行くのは得策じゃない。まずあの女が何者なのか知る事が先だ。

ギリ、っと歯軋りをして行く末を見守ることにした。

いつでも女の首を狙えるよう、目だけは鋭く光らせながら…


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