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「なるほどねー、こいつ売人だったのねー」

ベットに横になる男を見下ろしながら、私は一人納得していた。

どうりで頭が悪そうに見えた訳だ。



廊下で男が倒れてから、私はホテルの人間を呼び「知り合いが飲みすぎて倒れてしまったので部屋まで運びたい。」とこの男の部屋まで運んでもらったのだ

人を呼ぶ前に男の上着をあらかじめ確認して、ルームキーの番号は把握していたので疑われる事はなかった。

なので今、男の部屋に居る。

中は私の部屋とそう変わらず、長くホテル住まいなのか衣服は脱ぎ散らかり、ゴミも散乱していて、タバコ臭くて、掃除はしてもらっていないみたいだ。

…中に人を入れたくないのかな。

男は気持ちよさそうに寝息を立てていて、私は眉根を寄せてちょっと距離をとった


この売人は私のスタンド能力で眠りについている。

[Moon without the stars]

これが私のスタンド能力だ。
要約すると、夢を操る能力。

操るだけでなく、その本人が今まで見てきた夢を私は見る事ができて、体験も然りだ。

能力の発動には、私のスタンドと眼があった時点で完了する。

そこからは現実と相手の夢との区別をつけるために、自分の眼を閉じで意識を集中させる。


今も瞼を下ろし、男が見てきた夢を物色している。



「んー?あ、やっぱりこのホテルに住んでるのか」

夢には記憶も混ざっている。
今日起きた出来事が、その日の夢に出てくる時があるでしょう?

その夢か記憶かの境目は曖昧だが、まぁ私には何となく分かる。

この男の夢から知るに、こいつはヤクを売って得た金をこの部屋の隠し金庫にしまっているみたい…

瞑った瞼の裏に広がるその光景に、私は溜息をついた。


「ろくな事してねぇな、こいつ」

金庫の暗証番号もばっちり見えてしまったし…あ。記憶から夢になってしまった

突然辺りが南国に切り替わり、私はスタンドを解除させる


辺りに広がっていた夢は消え、いつもの瞼裏に広がる暗闇が戻ってきた

ゆっくりと眼を開けると、まだ男が寝息を立てている



スタンドを解除する前に、男が見ていた夢に細工をして明日の朝頃に起きるようにセットしておいた。

どうしたかって、見ていた夢の終わりを昔の夢と繋げて、ロング上映にしてやったのだ。

これでしばらくは起きないでしょ。

親切に悪夢を選んであげたのだから、明日の朝はばっちり起床だ


男のルームカードキーをポケットに仕舞い、さっさと自室に戻った


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