稲妻11.

□空色ラプソディ
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風丸一郎太という男は大変ずるい。

自分は女の子にモテモテでしょっちゅう告られているくせに、私が少し円堂くんや豪炎寺くんとおしゃべりすると途端に機嫌が悪くなる。

「一郎太なんか、大嫌い!」

私がそんな台詞を放ってしまったのはつい10分ほど前のことだ。一郎太が可愛らしい女の子たちに囲まれて困っていたから「練習始まるみたいだよ」と助けてあげた。もちろん女子たちには睨まれたが。

そのあとその女子たちに呼び出しをくらった。何事かと思いつつついていくと、知らない男の子と薄暗い空き教室に二人きりにされた。

「俺、みょうじさんのこと好きだったんだ」

「でも風丸がみょうじさんにべったりで近寄れなくてさ」

「俺と付き合おうよ」

何を言っているんだこいつは。
そんな目で相手を見ていると、不意に肩を捕まれて背中に衝撃が走った。視界に広がるのは先程の男の子の顔と天井。

人生初、押し倒された。
一郎太にもまだされてなかったのに。

「ちょ…冗談」

「冗談じゃないよ」

男の子はくすくす笑いながら私のシャツに手をかける。怖い。逃げようともがいてもびくともしない。

「や、やだ…助けて…っ」

そのときだった。
教室のドアが乱暴に開いたかと思うと、息をきらした一郎太がそこに立っていた。

「一郎太…!」

「なにやってんだよ…」

「チッ」

私の上から退く男の子。私は一郎太に急いで駆け寄ろうとした…が。

「お前ら、なにやってんだよ!」

「…え?」

「なまえ、お前そんな奴だったのかよ…」

「ちょ…待ってよ一郎太!私は…!」

「言い訳はいい!」

一郎太は怒鳴った。
怖かった。

そして、どうしようもなく悲しくなった。

「…なんか、」

「え?」

「一郎太なんか、大嫌い!」






「…はあ」

夕暮れの屋上で一人ため息をつく。あーあ、終わったな、私たち。大嫌いって言っちゃったし。一郎太、驚いてたなあ。

だけど、でも、我慢の限界だ。

私なんかよりずっと可愛げのある子たちに囲まれてるくせに、一郎太は私が好きだと言った。不器用で、可愛いげがなくて、素直じゃない私なんかを好きだと言った。

「…ばか、私」

なんで泣いてるの。

一郎太。一郎太。一郎太。一郎太。頭のなかは一郎太のことでいっぱいだった。笑った顔も怒った顔も、照れた顔も悲しそうな顔もなにもかも全部全部大好きだった。

「…うう…」

涙が止まらない。
声を押し殺して嗚咽していると、屋上の扉が開く音がした。

「…なまえ」

さっき会ったばかりなのに、酷く懐かしく感じたその声。

「…いちろーた」

「…なまえ…ごめん」

一郎太は私に近寄ると、涙でぐしゃぐしゃな私を優しく抱き寄せた。一郎太の匂いがする。どこか甘くて、柔らかい、一郎太の匂いが。

「俺…どうかしてた。本当は、わかってたよ、お前があいつにそういう気はないって…でも、なんかカッとなっちゃって…ごめんな、怖かったよな…?」

一郎太の片目が私を覗く。私は、こくんこくんと何度も頷いた。

「わっ、私…っ」

「…うん」

「一郎太に…嫌われたかと思って…っ」

「…なまえ」

一郎太は私の額に、ちゅ、と優しいキスを落とした。

「ごめん…俺、お前のこと好きだよ。本当に…どうかしちゃいそうになるほど、大好きなんだ」

「うん…」

「だから…泣かないでくれ」

一郎太は今度は唇にキスを落とす。スポーツドリンクの味がした。私が涙をとめたのを確認すると、一郎太は照れ臭そうに笑ってから額をこつん、とあててきた。

「…好きだ、なまえ」

「うん…私も」

「…なあ」

「ん…?」

「…お前の色んな初めては、俺がもらいたいからさ…」

今日、親家にいないから。
うちに泊まっていかないか?

恥ずかしそうにそう言う一郎太に、私の頬も赤く染まった。






空色ラプソディ
(君の髪が風になびく、)
(私の胸が同時にときめく)





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意味わかんないですね
続き書くかも(^o^)

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