雷撃少女!

□2.再会!電撃少女!
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*風丸視点



「久しぶりだな、お前たち」

響木監督が現れると、先ほどまで騒がしかった体育館内がしん、と静まり返った。監督は俺たちが全員そろっているかどうかを確認するようにぐるりと体育館内を一瞥すると、不服そうに眉根を寄せた。

「円堂」

「は、はい!なんですか?」

「柊木はどうした」

「え?ゆずは…ですか?」

「そうだ。あいつも連れてこい」

「えっ、で、でも…」

「あいつを連れてくるまで話はできんぞ」

全員そろったらまた呼べ、と言って、響木監督は再びその場から去っていった。

「円堂くん、確かゆずはちゃん…今日は学校の野球場で練習だって言ってたよ」

「わかった!サンキュー秋!俺、ちょっと探して…」

「待って!」

円堂が走り出そうとすると、大きな声でそれを止める人物がいた。

「お、俺も行く!」

「緑川…べつにいいけど、どうしてだ?」

「時は得難くして失い易しってね!俺――早く彼女に会いたいんだ!」

そう言って太陽のように笑う緑川に、思わず眩暈がした。恐らくたぶん、十中八九奴は、ゆずはに好意を抱いているのだろう。

「そうか!じゃあ一緒に行こうぜ!」

「円堂くん、僕も行くよ」

「吹雪?」

「俺も行こうかな…彼女には、世話になったしね」

「ヒロト…」

「円堂、俺も行こう。あいつとは一度、じっくり話をしてみたいと思っていたんだ」

「佐久間も…ようし!じゃあみんなでゆずはを迎えに行こうぜ!」

「風丸くん、いいの?」

こちらを見てくすりと笑う吹雪。俺は、自分でもわかるくらい顔真っ赤にさせた。

「な、なんでだよ」

「いや…ふふ。じゃあ僕がもらっちゃうからね」

「は!?」

俺はぎょっとして吹雪の顔を見た。やつの目は笑ってこそはいるものの、真剣そのものだった。

「〜〜〜っ!お、俺も行く!」

「風丸も行くか!ようし、秋、ちょっと野球場行ってくるな!」

「うん!いってらっしゃい」

マックスや鬼道たちの暖かい目を背中で受けながら、俺は野球場へと急いだ。















「キャプテン、がんばってください!」

「ゆずはー、決めちゃってー!」

「おっけー!」

野球場につくと、練習試合の真っただ中だった。バッターボックスに立つゆずはは、瞳を爛々と輝かせてとても活き活きとしていた。

「ゆずは先輩ホームランホームラン!」

「ええ!?だいぶ無茶降りだよ!」

「ゆずは、買ったらアイスおごってあげる!」

「うおっしゃこぃいいいいいい!」

ゆずはが叫ぶとチーム全体がどっと笑う。当の本人は自分がなぜ笑われたか理解していないらしく、「えっ?」と不思議そうな顔をしていた。

「…ゆずは、」

隣で緑川がぽつりとつぶやいた。気のせいか、若干彼の頬が赤い。

「いっくよー…てりゃあぁああ!」

カキン!

ゆずはの打ったボールは天高く飛んでゆき、彼女と同じチームだったものからは「おおおお!」と歓喜の声が、敵だった者からは「ずるいですよー!」という声が上がった。

「ゆずは先輩がそっちにいるなら、勝てるわけないじゃないですかー!」

「八割アイスのおかげでしょ、あの子の場合」

そしてまた上がる笑い声。ホームベースまで戻ってきたゆずはは満足そうににこにこ笑い、「さ、次次!」と拳を振り上げた。

「…ムードメイカーなんだな、あいつは」

佐久間が関心したようにつぶやき、ふっと口角を上げる。それに対して吹雪が「そうなんだよ、ゆずははすごいんだ」と嬉しそうに笑った。

「…お前、いつからあいつのことゆずはって呼ぶように…」

「風丸くんばっかじゃずるいもんね」

ふふ、と微笑む吹雪。ああ、もう、ちくしょう!俺はどうにもならない気持ちを抑え込んで、はあ、とため息をついた。

「おーいゆずは」

「あっ半田!」

「お前タオル忘れてったろ…おばさんが俺に届けろってさ」

「わ!マジか!サンキュー半田!汗だくで困ってたの!」

「うわっ近寄んな汗まみれ女!」

「なにをう!?」

突如現れた制服姿の半田に、その場にいた円堂以外のメンバーがぴくりと肩を揺らす。

「おら、とっとと汗ふけ」

「うわわわ!?ちょ、そんな乱暴にふかないでよ!髪の毛ぐっしゃぐしゃじゃんか…」

「もとからだろ」

「お前には後でちょっと話がある」

にこりと笑顔で言うゆずはに、彼女のチームメイトが冷やかしをいれた。

「夫婦漫才はよそでやってくださーい」

「きゃっ夫婦だって、半田!」

「ははは。面白いギャグだな」

「ねえなんか私に恨みでもあんの!?」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人は、至極楽しそうに笑い合っていた。俺は、ぐっと拳を強く握りしめる。

思えば俺はあいつに気持ちを伝えはしたものの、はっきりと返事はもらっていない。半田だってゆずはのことが好きなのだ。緑川も、吹雪も…ヒロトや佐久間だって、もしかしたら。

俺は、こんなところでぐずぐずしている暇はないのかもしれない。

「先輩、そろそろ時間ですよ」

「ん?あ、ほんとだ!じゃあみんな、今日はこれで解散!お疲れー!」

「お疲れ様でしたー!」

部員たちはぞろぞろと更衣室のほうへ向かっていく。ゆずはは半田に「着替えてくるから待ってて!」と告げて更衣室へ向かった。

「終わったみたいだな!」

円堂がそう言って駆け出し、半田の元へ駆け寄る。

「円堂?野球場にいるなんて珍しいな。どうかしたのか?」

「俺たちはゆずはを待ってるんだ!」

「え?あいつを?」

半田は一瞬で表情をこわばらせた。無理もない。今まで悪い虫から番犬のようにゆずはを守ってきたのだ。いわば彼女は、半田の大切な大切な幼馴染であり思い人だ。

そんな彼女が、こんな男の集団に呼び出されるとなれば、半田が警戒するのも無理もない。

「ていうか…お前たち!吹雪に佐久間!あとはエイリアの…」

「おまたせー!」

がちゃっ!と更衣室の扉が開いて、制服姿に背中にバットを背負ったゆずはが現れた。

「…って、ええええ!?これは何のオールスター!?」

びっくりしてあたふたして挙動不審になる彼女は正直、死ぬほど可愛らしかった。






再会!電撃少女!
(パニックになったそいつはとりあえず、)
(半田の背中に隠れた。)

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