捧げもの/いただきもの
□鈍感さん、お隣さん。
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「蘭ちゃん!」
今日も俺の長い一日が夕日とともに沈んでゆく。部室でユニフォームから制服に着替えて門の外に出ると、一人の少女が嬉しそうに俺に近寄ってきた。
「ああ、みょうじ」
「部活終わった?一緒に帰ろう!」
「そうだな」
俺はにこりと笑ってその少女の手をとる。小さい頃から一緒だった俺と神童とみょうじは、いわゆる幼馴染というやつだ。特に俺はみょうじと家が隣同士で、小さい声頃から文字通りの俺の隣はこいつの定位置だった。
「あれ?神童くんは?」
「ああ…あいつは、」
「あっれー、霧野先輩。彼女ですか?」
俺がしゃべろうとしたときにセリフにかぶってきたのは、小生意気な後輩である狩屋マサキだった。ため息をつきながら振り向き、「幼馴染だ」と答えると、狩屋は一瞬ぱちくりと小動物のように目を瞬かせ、「ああ!」と合点がついたように手を打った。
「天馬くんたちが噂してた、霧野先輩の好きな人――」
「っ狩屋!」
「?なんの話?」
きょとん、と首を傾げるみょうじ。俺は、狩屋の口を必死でふさぎながら、なんでもない、気にするな、と答えておいた。
「ぷは…っ先輩、必死すぎ…」
「うるさいぞ狩屋」
狩屋は今度はにこりと愛らしい笑みを浮かべて、みょうじに向き直った。
「俺、サッカー部一年の狩屋マサキっていいます。みょうじ先輩、よろしくお願いしますね」
「わあ、狩屋くんね。うんうん、あ、蘭ちゃんからたまに話は聞いてるよ」
「え?なんて?」
「問題児だって」
「…霧野先輩、ひどいなぁ」
非難するような目で俺のことを見る狩屋。だって本当のことじゃないか、と返すと、はいはいそうですねとすねたように口をとがらせた。
「じゃ、俺もう帰りますね。せっかく神童先輩たちが気を使って二人きりにしてあげてんのに、俺がそれを壊しちゃいけないですし」
「ばっ、狩屋…!」
「みょうじ先輩、さようなら」
「うん、狩屋くんさようなら」
二人はのんびりと笑い合って手を振った。
「蘭ちゃん、狩屋くんいい子じゃん」
「…まあ」
「素直じゃないんだから」
そういってくすくす笑うみょうじの白い頬を思い切りつまんだ。痛いよ蘭ちゃん、と涙目で訴えてきても聞いてやらない。
「ゴム人間になっちゃう」
「そうしたら大秘宝を求めて旅に出ればいいだろ」
「蘭ちゃんが航海士やってくれるならね」
「俺は男だ」
ちぇ、と声をもらすみょうじ。本当に、こいつは俺を男として認識しているのだろうか。頬から手を離し、みょうじの小さな手を再び包み込んで歩き出せば、みょうじはてくてくと後ろからついてくる。
「かーらーすう、なぜなくのぉー」
「静かに歩けよ…」
「えー。やだー」
くるくると楽しそうに笑うみょうじ。その横顔が夕日に照らされていて、不覚にも胸がどきんと高鳴ってしまった。だめだ、俺は本当にこいつ相手だと余裕がない。
「なあ、みょうじ」
「ん?」
「好きだ」
「私も」
即答。それがどうかした?と首を傾げられる。
ああ、俺の思いが報われるまで、あとどれくらいかかるのだろうか。普段は微塵も信じていない神様に、ひとつよろしくと頼んでおいた。
鈍感さん、お隣さん。
(玉砕記録×××回目。)
(思い続けて増すばかり)
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ザクロさん相互リンクありがとうございます(^O^)!リクエストいただいた蘭丸くんでした!ピンクツインテぺろぺr(
これからみよろしくお願いします!(=^・ω・^=)
*お持ち帰りはご本人さまのみでお願いいたします!