優しさに包まれたなら
□カーテンを開いて
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鳴り響く目覚まし時計のベル。
1つ、2つ、3つ、4つと
枕元に並んだ順に鳴り続ける。
「…う!る!さ!い!」
〜♪〜〜♪
手探りてベルを1つずつ消していくと、今度は携帯のアラームが鳴った。
この曲は美亜姐さんのだ!
「はい、もしもし!」
『おや、さくちゃん。早いね。あともう10コールぐらいかかるかと思ったのに。』
「おはようございます。美亜姐さん。」
『はい、おはよう。昨夜は良く眠れた?』
「はい。充分に睡眠をとることが出来ました。今から朝ごはんを作る予定ですが、姐さんも食べに来ますか?」
『良いの?やった♪久しぶりのさくちゃんのご飯だ!』
「鍵は開けておくので勝手に上がっていてください。」
『らじゃ!5分後にはそっちに着くよ。』
「了解しました。」
電話の通話を切って寝間着を着替え、洗顔したりしていると、玄関のチャイムが鳴った。
「どうぞ〜!」
「おっはよ〜。さくちゃん!」
「おはようございます。姐さん。今用意しますね。」
自炊派の僕は毎日自分でご飯を作る。
と云うか、両親が居ないから自分で作る他ない。
何処かで生きているとは思うけど、
正直顔も覚えていない。
物心ついた頃…5、6歳の頃にはもう居なかったし。
悲しいとか、寂しいとか、思ったことはない。
仕方がないもの。
「うわぁ〜美味しそ〜。」
美亜姐さんの声にハッと我に返ると、いつの間にか準備を終えていた。
また無意識に体が動いてる。
「ねえねえさくちゃん。もう食べて良い?」
「ええ、どうぞ。」
わーい。いっただっきまぁす!と嬉しそうに食べてもらえると作った甲斐があるってものだ。
美味しいね
ありがとうございます。
他愛のない会話をしながら食べるのは随分と久しぶりで少し違和感はあるけれど、コレを不快と感じないのは、きっと一緒にいるのが美亜姐さんだからだろう。
「美亜姐さん…」
「ん〜?」
「その…姐さんが通ってる…学校って……どんなところですか?」
今日、何時もより早く起きたのは、姐さんが通う『逢華(オウカ)学園』に僕が編入するからだ。
「逢華?…そうね…前にも簡単な説明はしたわよね。覚えてる?」
「はい。私立逢華学園は幼稚園から高等部まで内蔵された財閥や家元など各業界のご子息様や令嬢が親元から離れ通う学園。」