silver soul

□美しき悪者たち
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広い広い宇宙


前も後ろも上も下も右も左も


一体どっちに進んでいるのか分からなくなる


真っ暗な宇宙


そんな宇宙に2槽の船が浮かんでいる


その内の小さな方の船に


船の持ち主達はいた







女物の着物をだらしなく着こなし、煙管(キセル)片手に窓から宇宙を見ているのはその船の主―鬼兵隊トップの高杉晋助


黒いチャイナ服を着、足を揺らして席に着いているのは大きい方の船の主―宇宙海賊春雨提督兼第七師団団長の神威


この二人は先程から口を交わしていない


だが、二人は気まずい沈黙などにはならなかった


なので、神威が高杉に話しかけたのも『自分が暇だから』である


「晋ちゃん、さっきから何見てんの?」


神威が動きを止めて高杉の方を見る


「いや、別に何もねェよ。強いていうならァこの先の地球ってとこか。…後、変なあだ名つけんな」


返事こそしているが高杉は窓から顔を動かさない


神威の方を見向きもしない


その態度にすっかりご立腹の神威


頬を膨らませて高杉に言う


「そんなもの見てないで、俺の方見てよ」


そんな神威の声は部屋に響く


そして沈黙


「そんなもの見てないで、俺の方見てよ」


聞こえてないのかと思った神威は一語一句違わず同じことを言った


それを察したのか


「聞こえてる」


と一言だけ返ってきた


「聞こえてるのにこっちを向かないということは、即ち(スナワチ)無視してると捉えていいんだよネ?」


高杉に問う神威の笑顔はニッコリというよりニッタリという効果音が合っている


「…好きにしろ」


これだけ言っても神威を振り向かない高杉


神威の口角が妖しげにあがった


「ふ〜ん、そう」


神威はスタッと立ち上がり高杉に近づく


高杉はその気配を感じつつも無視を続ける


神威は高杉の真後ろに立ち、高杉の肩に腕を回し地面に押し倒す


高杉の手からは煙管が落ちた


高杉の上に神威が乗っているという状況になった


「ねぇ…俺のこと見てよ……」


神威は震える声で囁く


高杉は神威と初めて目を合わす


だが、高杉は神威を見ているようで見ていない


高杉の目には神威など映っていない


高杉の目には神威以外の誰かが写っているのだ


「な、んで…」


神威は涙が目に溜まる


「俺を…見てよ。ねぇ……俺だけを見てよ…」


そんな神威の言葉は虚しく


高杉の目には神威は映らない





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