機動戦士ガンダムSEED Destiny ザフト編(完)

□小休止
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「にしてもさ、お前それどうしたんだよ」

 イザークに追い出されて、ディアッカとレストルームへ向かっていた。

 ディアッカはもう任務がないらしい。

「ああ、これ?」

 言いつつ、僕は自分の顔を触る。

 ヒリヒリと痛い。

 所々につぶつぶと指先に触るものがある。

「アニメの登場人物は肌荒れしないのに……」

「そりゃ、これは小説だから。じゃなくて、なんか不自然だぞ? 痛いだろ」

「うん」

 ため息をついて、コーラを買った。

 無論、タダ。

「なんか、アスランの護衛したあとくらい、かな」

「お前、もしかして化粧落とさなかったとか言わないよな?」

「洗ったよ、シャワーあびたもん」

 当たり前だ。という僕の態度に、あろうことかディアッカはため息をついた。

「クレンジングとか、持ってるわけねーよな、お前が」

「何それ?」

 首を傾げた僕に、ディアッカは苦笑した。

 どうやら、化粧を落とすには洗顔だけではダメらしい。

 そんなの知らないし、やってないし、そもそもなぜディアッカがこんなことを知っているのかが気になるが、この肌荒れはそれが原因か。

「そのうち治るよ」

「コーラ飲みながらじゃ、説得力ねーけどな」

 確かにお肌には悪そうだ。

「にしても、どうしたんだよ」

「?」

「いきなりイザークんとこに来るなんてさ」

 それには、ただ単に宿がないことを言い訳にできない含みが入っていた。

 確かに、広いプラント。しかも軍事コロニーで、戦争中。

 ザフトの軍人なら、探そうと思えば泊まるところくらい簡単に見つかるだろう。



 でも、そうしなかった。

 一人が嫌だということもあるが、それ以上に。

「ディアッカはさ、外見に不服ないの?」

「俺? あったりまえじゃん、ルックスに問題
なし」

「そうじゃなくて……」

 聞き方が悪かった。

 いや、相手が悪かったか?

「金髪は、元々ある色だけど、紫の目」

 そう言って、ディアッカの瞳を見つめた。

 自然に生まれることはない、紫色の瞳。

 これもコーディネーターだからできること。

 でもそれは、ただの親のエゴじゃないか?

 突飛な配色に、みんな満足しているのか?

 親がそうだから、二世代目の子どもには分からないのだろうか。


 僕は不快だった。


「僕の両親は黒い目に黒髪。なのに僕はこの通り」

 コーディネーターだから当たり前。

 でも、本当に?

 肌の色、瞳の色、髪の色。

 全ては親から受け継がれた遺伝子からの産物。

 それが、目前で断たれた気分になるのは、僕が一世代目のコーディネーターだから?

「何? 色がヤなわけ?」

「色っていうか……まあ、近いけど」

 正確にはきっと、絆。

 つながりが欲しいのに、邪魔をする。

 ディアッカは首をかしげて僕を見た。

 目が合う。

 それは互いを観察する視線だった。

「別に、いいんじゃね?」

 答えは簡単に、あっさりしていた。

「うん、それは、もう、いいんだ。でも、やっぱり変な感じ」

「キレイだけど?」

「自分じゃ、そう思わないよ」

 特に、今は。

 この瞳を好きだと言ってくれたニコルはいない。

 青の機体を乗っていた、ラークもいない。

「だから、イザークのとこに来たら、何か分かるかと思って」

「何でイザークなんだ?」



「キレイだから」
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