機動戦士ガンダムSEED Destiny ザフト編(完)

□アーモリーワン
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 進水式を待つミネルヴァメンバーの前で自己紹介が済み、今日のところはシュミレーションを行う卒業生の見学だけ。

 まぁ、馴染む日。ということ。

 ミネルヴァのMSパイロットは、赤服の3人。

 一人は珍しく、女の子だ。

 ショートの赤い髪に、意思の強そうな瞳が印象的だった。
 
 イザークのところのシホとは正反対みたい。

 その女の子が、シュミレーションを終えこちらに視線を向けた。

 体ごと向き直り、敬礼をする。

「ルナマリア・ホークと申します。あの、お願いがあるのですが……」

「何?」

 赤い上着の下には、短いスカート。

 真似はできないな。と思いつつ、話を聞く。

「私と、勝負していただけませんか?」

「はぁ?」

 空いた機械に座ろうとしていた少年がこちらを見ていた。

 無造作に切られた黒髪に、赤い瞳。

「何言ってんの? ルナ」

 子どものようにきょとんとした瞳は、そのまま純粋さを映していた。

「あの、厚かましいことは分かっています。ですが、これから戦場へ出ることを考えて、私は……」

「いいよ、そんなに気負わなくて。うん、それは当たり前の心理だと思う。むしろ、そう考えてもらわないと困る、かな」

「あ……」

 きょとんとしていた少年も、ルナマリアの心意気が分かったのだろう。

 シュミレーターに傾いていた体をこちらへ向けた。

 もう一人の金髪の少年も、顔だけこちらへ向ける。

「ああ、シュミレーション続けてていいよ。今日は僕、見学だから」

 承知したのか、金髪の少年は画面へ向き直る。

 だが気配をこちらに集中しているのが分かった。

 彼が、この中では一番腕がいいかもしれないな。と当たりを付ける。

「シュミレーションは何回でもリセットがきくし、それで何回も練習すれば、攻撃パターンは頭に入ってくる。でも、それじゃ初陣で堕ちる可能性が高い。一番いいのは、より多くの人間との対戦だね」

「はい!」

 暗に正しいと指摘されたのに気づき、ルナマリアは笑顔で頷く。

「ここって、機械二つだけ?」

「あ、あっちにまだありますから……」

 案内しようとしたルナマリアを、金髪の少年が呼び止めた。

「いい、ここでやれ」

「え、いいの?」

「ああ」

「ありがと」

 先を行くルナマリアについていく。

 機械から出てきた少年と目があった。

「ありがとね」

「いえ、キリがいいところでしたから」


 そして、すれ違った瞬間、何かひっかかった。


「君……」

「は。レイ・ザ・バレルと申します」

「あ……うん、よろしくね」

 名前を聞いて、一瞬思い出しかけた人物をかき消された。

 何だろう。
 誰かに似ているのだろうか。

「ごめんね、シン」

 機械を借りるルナが、少年へ笑顔を向ける。

「ああ、いいよ。その代わり、次俺な」

「それ言うの、私じゃないわよ」

「あ」

 くすくすと指摘されて、少年はこちらへ向き直った。

「シン・アスカです。ルナの次、俺もいいですか?」

「いいよ。じゃ、やろうか」

 シートに座ったルナマリアは、即座に顔を引き締めた。

 戦士の顔。

 ただ、まだ少し、足りない。

 戦場へ出る前は自分もそうだったのかと、どこか懐かしく思った。
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