機動戦士ガンダムSEED Destiny ザフト編(完)

□小休止
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 そう、あのときはL4に艦が停泊だったから、軍事施設の寮が使えた。

 今回はアプリリウスまでのチケットが軍から支給されて。

 艦はハイネがすぐに手放して。

 次の集合まで艦はない。

「また、家なき子か……」

 荷物はアカデミーに隣接している軍施設で預かってもらえるが、僕は預かれないらしい。

 アカデミーの寮でもいいから。なんて言うのはやめた。

 もう心は決めている。



「貴様……なぜここにいる!?」

 ここ。とは、ジュール隊イザーク・ジュール隊長の士官室。

 丁度評議会への報告でアプリリウスに来ていたのだ。

 なんと言う偶然。

「神様っているんだ」

 じーん、と人が感動しているのに、イザークは荒々しい足取りでソファにいる僕のところまで向かってくる。

「あのさ、艦も隊も移動になって、休暇もらったんだ。それで……」

「その先は分かる!」

「さっすがー」

 怒鳴られた、でも説明する手間が省けた。

「ホント懲りないね、お前」

 後から入ってきたディアッカが片目をつぶって挨拶してくる。

「懲りないって言うか、万事休すっていうか」

 世の中お金。寂しい寂しい。

「俺は軍務がある! 貴様にかまってなどおれん!」

「別にかまわなくていいよ。寝られる部屋があれば」

「まだそんなことを言っているのか!」

 男の部屋に転がり込むなってことかな?

 だが、軍での知り合いは男しかいない。

 その中で広い部屋を持っている人物といったら、限りに限られてここになるのだ。

 それに。

「イザークがとても心配してくれてるから、僕も考えたんだよ」

「?」

「他の男で心配かけるなら、イザークのところに泊まろう! 作戦、みたいな?」

「何が。みたいな? だ!!! 根本的解決になっとらんだろうが!」

 さらさらの髪を揺らして怒るイザークはいつもの調子。

 それをなだめるディアッカもいつもの調子。



 大丈夫。
 この二人は、ここにいる。



「いいじゃねーの。こいつの言うことも一理あるぜ? それに何かと雑用できるんだから、置いてやれよ」

「ディアッカさん、僕休暇中です」

「そんな屁理屈で納得できるかぁ!」

「だから! 他の人と間違い起こしたらイザーク怒るけど、イザークと間違い起こしても怒んないでしょ!?」

「当たり前だ! だがここは士官室であって、そう人を泊めていては、シメシが、つか……」

 ふと、イザークが僕とディアッカの顔を見た。

 ディアッカも、僕もきっと、イザークを唖然と見つめていたから。

 何か、すごいことを言われたぞ??

「何だ?」

 僕たちの様子にイザークが訝しげに顔をしかめる。

 ディアッカが堪えられなくなったのか、腹を抱えて笑い出した。

「いい! お前らメチャクチャ最高!!」

 返す言葉はなく、僕はソファに寝転がった。

 とりあえず、僕はここにいられるようだ。

「おい! どういうことだ!」

 一人事情がつかめていないイザークは、ディアッカに詰め寄る。

「イザークと問題起こしても怒んないんでしょ!? 当たり前だ! って、そりゃ天下の隊長様がこいつを『どうこう』しても怒る奴はいねーけどさ」

 笑いながらのディアッカの説明に、イザークが眉を寄せる。

 まだ分からないようだ。

 自分の爆弾発言が。

「お前も怒らねーんだ? こいつとナニかあっても」

 妙にいやらしく脚色して伝えたディアッカに、みるみるうちにイザークは顔が赤くなっていく。

「まぁ、僕は宿があればいいって言う意味だったんだけどね」

 僕も笑いをかみしめて言うと、イザークの怒りは頂点に達したようだ。

「貴様らぁぁぁぁ!!! 今すぐ出ていけー!!」

「夕方には戻ってきまーす」

 そう言って、軍服のままだがイザークの部屋をあとにした。
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