機動戦士ガンダムSEED Destiny ザフト編(完)

□再びの核から始まる
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 Z.G.M.F-X30S 『パーシャル・デスティニー』

 そう書かれたマニュアルディスクを手に、僕は自分の機体の前に立った。

 自分専用の機体を用意されたのは初めてだ。

 しかも、託したのは、デュランダル議長と、ニコルの父。

「試作段階の運命、か」

 つまり、不完全な運命。

 皮肉にも、自分に似合いの機体というわけだ。

 ゲートの中には、数名のザフト兵士と、マニュアルを渡してくれた機体開発の人間しかいなかった。

『信じられないよ。君や、ニコルみたいに、戦争を終わらせるために、必死に戦っている人間がいるのに、それをあざ笑うように反逆を犯す人間がいるなんて』

 ニコルの父が、アスランへ機体を託したときに言った言葉。

 今は公に姿を現さないユウリ・アマルフィ。

 息子を失い、指導者を失い、彼はどんな思いでこれを開発したのか。

 そして、これからどんな思いで、僕のデータを解析していくのか。

 僕のデータが、あの人の役に立ったら。

 一緒にいたのに、ニコルを助けられなかった僕を、許してくれるだろうか。

「ここにいたのか」

 ゲートが開いて、白い軍服をまとった人物が現れた。

 その姿からは、いつもより多くの緊張感があふれ、僕は唇を引き結んだ。

「マニュアルは読んだか」

「うん。もしかして、もう必要?」

 イザークはうなづいた。

「すぐにゴンドワナまで移動しろ。ヴェステンフルス隊と合流後は、隊長の判断を仰げ」

 イザークは淡々と告げた。

 きっと彼の心の中には、暴れだしたいくらいの怒りがあふれている。




「開戦だ」

 争いのない未来のために。

 そんな未来が、あるのだろうか。
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