機動戦士ガンダムSEED Destiny ザフト編(完)
□アーモリーワン
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「訓練の筋はだいたいマニュアルに載っている。あとは戦場へ出たときとシュミレーションのギャップを、貴様の感覚で教えていけばいい」
「んー、覚悟はしてたけど、面倒だね」
アーモリー・ワン。
シャトルでまず向かったのは、軍事工業プラントだ。
「一週間後、ミネルヴァの進水式がある。今日付けでミネルヴァのパイロットとしてメンバーに入ってもらう。評議会へは俺が取り次いでおくから、早く着替えてさっさと出て行け」
「はーぁ、冷たいなぁ、イザークは」
「来るなり人のベッドで休んでいる馬鹿に、ここまでやっているんだ。感謝しろ」
「だって、僕のベッドないし」
平然と答えると、ディアッカの笑い声がした。
ここはイザーク、要するにジュール隊長のための執務兼私室になっている。
旅の疲れもあってか、隊長室に通され、隊長はこんなにふかふかのベッドに寝ているのかなんて思っていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。
慌てたイザークの怒鳴り声に起こされて、ベッドに転がったまま説明を受けている。
冷静な彼のあわてふためく顔を見たかったのなら、最初からこうすればよかったのかもしれない。
僕が相手でも、イザークは慌てるらしい。
アスランといい、本当に女性に免疫がない。純粋培養な軍人だ。
「お前も変わってないね、今時、根性あるオペレーターでもジュール隊長のベッドにもぐりこめないって」
こっちは十分汚染されて培養されたようで。
「どうせ乗船したらうちになんて帰らないでしょ? 部屋借りるのも、面倒だし、お金もったいないし」
「別にいいじゃん、借りるだけ借りとけば」
この金持ちめ。
家賃がどれだけエンゲル係数を下げるのか分かっているのか。
「貴様、本当に借りていないんだな」
「え? うん」
イザークに盛大なため息をつかれて、首をかしげた。
「一週間、どうするつもりだ」
「………」
考えていなかった。
「あの、ミネルヴァの中に、ってゆうのは」
「無理に決まっているだろう」
「じゃあ、MSの中でもいいから」
「MSを何だと思っている」
「いいじゃん、ここで」
「ディアッカ頭いい」
「ディアッカぁ! 余計なことを言うな!!」
口を挟んだディアッカに、万年筆らしきものが飛んだ。
それにしても、ザフトに戻ると言ったさきで宿に困るとは思ってもみなかった。
アカデミーには寮があったし、卒業してすぐに乗船したので、あのときからプラントに家はなかった。
「宿舎は?」
「あ、そうだよ。軍事施設なんだからねー」
明るく意気投合するディアッカと僕に、イザークは盛大なため息をついた。
「今いっぱいだ」
「……何が?」
間の抜けた声に、はっきりと言ってやった。
「この、忙しいときに、貴様の生活する部屋などない!!」
「その言い回しは、ひどいと思う」
「イザーク、あのさ、俺が言うのもなんだけど、そろそろはっきりさせねーと、時間ねーぞ?」
ディアッカの冷静な指摘に、二人が時計を見る。
液晶のデジタル時計は14:00。
確か、顔見せが30分後。
「………ディアッカの部屋にでもいろ」
「あ、それいいじゃん」
「やだ」
「え」
軽くショックを受けたディアッカを無視して、会話は続く。
「ディアッカの部屋、毎晩立ち代り違う女の人来そうじゃん。だったら、イザークのとこのがいいよ」
「あのさ、いくら俺でも毎晩は……」
「それに、名目上も、隊長がお守りするってことでいいと思うけど? こんな『忙しい』時期だもんね」
会話が進むにつれて、ディアッカは疎外感を感じ、イザークは目頭を押さえ始めた。
結局、イザークの反対の声は、ディアッカの正論で打ち破られる。
「シホの部屋に寝袋が置けるか聞いてやるから、それで……」
「じゃあお前、昨日どこで寝たの」
「ここで」
「イザークは?」
「………」
「おい」
「………うるさい!! 疲れていたんだ!」
僕はくすくすと笑い声をあげた。
ディアッカも、こいつだけは敵に回したくないと密に思ったかも。
「一緒に寝ちゃったよねー」
「んじゃいいじゃん、ここで」
無駄な会議に付き合ったと言わんばかりのディアッカの言葉で、宿は決まった。
「貴様……さっさと着替えて出て行け!!!」
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