side-JADE

□すごくこまるんだ-after-
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(あーあ……俺、何やってんだろ……)

スタジオが入ってるビルの屋上で、一人煙草をふかす。

頭の中はヒロインちゃんの事でいっぱい。
気づけばくわえっぱなしの煙草は半分以上が灰になっていた。

(色々と重症だわ、これ……)

灰を落とそうと煙草に触れると、振動でぽろりと落ちた。
さらさらと風に吹かれて散り散りになる灰を、俺ははただ眺めるしかなかった。

はぁっと大きくため息をつくと、背後のドアが閉まる音が聞こえる。
振り返ると秋羅が歩いて来るのが見えた。

「ん」

秋羅は俺の隣に並ぶと、缶コーヒーを差し出す。

「サンキュ」

もらったコーヒーを開けると、ぐいっと一口飲む。
そして再びため息をつく。

「何があった? らしくないな」

「あー……悪い。
悩むなんてガラじゃねぇんだけどな……」

「ホント珍しいよな。
どれどれ。おにーさんに話してみないか?」

普段なら秋羅にさえ悩み事なんて話さない。
俺のキャラじゃないし、話して解決するならとっくにそうしてる。

だけどこれは秋羅にも責任(?)の一端はあるし、
このままだとメンバーに迷惑をかけるだけだ。
おれは観念して秋羅に話し始めた――。



「……って訳」

「何? お前、本気だったの?」

秋羅が驚くのも無理はない。
だって、俺が恋人を作らない事を知っているから。

「本気だけならいいんだけどさぁ……」

と、今朝の出来事も話す。

「やっちまったな……でも男として、その行動は間違ってないな」

苦笑混じりに言う秋羅。

「だけどよー、水城冬馬としてはすげぇ問題なわけよ。
俺、どうしたらいい?」

「どうもなにも、ヒロインちゃんに確認するしかないだろう?
ま、俺としてはこのままぐだぐだなお前を見てるのも面白いけどな」

「他人事だと思って……くそぉー!」

そう。
結局はヒロインちゃんの気持ちを確認するしか、
このもやもやを解決する術はない。

逆に言えばそれしかないならあれこれ考えていても仕方がないという事だ。
俺は両手で自分の頬をバチン! と叩いて気合を入れると、
レコーディングを再開させる為にスタジオへ戻った。
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