side-JADE

□Windy Road
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「あれ?春、車は?」

いつもの車が見当たらない。
春、歩いてきたの?
でも何か音はしてたよね…?

「ああ、今日はこれ」

と春が指差す先には1台のバイク。
赤いそれには「DUCATI」というロゴが入っている。

「ドゥ…」

「ドゥカティ」

読めずに詰まっていると横から春が教えてくれた。

「イタリアのバイクだよ」

「春ってバイク好きだったっけ?免許持ってるって聞いた事もないし…」

「好きだし乗りたいんだけど事務所が…。
ヒロインを乗せるし、無茶しないって条件で許可をもらった」

嬉しそうな顔をして言う春。

春とバイク。
ありそうだったのに想像もしなかった組み合わせ。

「寒い時期なのですまない…どうしてもヒロインを乗せてツーリングに行きたくて…」

ちょっと照れくさそうな春と、バイクという未知のものに新鮮さを感じて、

「ううん。バイク初めてだから楽しみだよ!それに…春が一緒だったら、
寒くても平気…」

最後まで言い終わらないうちに、言葉は春の唇に飲み込まれた。

「そんな可愛い事言うと…ツーリング出来なくなる…」

春の顔が赤いのは寒さのせいだけじゃないみたいだった。


渡されたヘルメットを被り、跨ったはいいけど捕まる場所がない。
後ろでわたわたしてるのに気付いたのか、
春は私の手を取って、自分の腰に回した。

これって抱きついてるのと同じだよね…。
春に分かるんじゃないかってくらい胸がドキドキし始めた。
挙動不審になってる私に、

「大丈夫だから」

と、ジェスチャーで伝える春。
こくん、と頷いた私を見ると、春はアクセルを開けた。

轟くエンジン音と体に伝わる振動。
初めての経験なのに、何だか心地いい。
その振動をもっと感じたくて、私は春に抱きつく腕に力を込めた。
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