三池亮太
□今夜ちょっとさ
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「何の事ー?」
謝る彼女にとぼけてみせる。
些細な言い合い。
俺はそんな事気にしちゃいないけど、
彼女がそのせいで自分1人の世界に閉じこもった事が許せない。
手を伸ばし、さらさらと彼女の髪を梳く。
それでもまだこっちを向こうとしないので、
少し体を起こし、手を頬に添える。
「ねぇ…こっち向きなよ」
俺の言葉に躊躇いながらもこっちを向いてくれる。
その瞬間を逃さず、彼女にさっと口付ける。
作戦完了―。
案の定、彼女はりんごみたいに真っ赤になった。
そこにはもう、ふくれて拗ねてる女の子はいない。
「別に何とも思ってないけど…
俺がいるのに1人だけの世界を作って出て来ないからさ…」
きっと今の俺は、いたずらを思いついた子供みたいな目をしている。
「ちょっとしたペナルティは必要だよね?」
起き上がり、彼女を抱き寄せる。
「今夜は…『僕』が夢を見るまで抱かれてて?」
彼女に回す両手がまるでドーナツのようだ。
甘い拘束ね…悪くないかも。
彼女に返事をする間も与えず、そのまま抱き上げて寝室へ直行。
僕モードの俺に抵抗しても無駄だと分かっている彼女は、
大人しく抱かれて、俺はそのまま深い眠りに落ちていった。