本多一磨

□桜色の季節
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「もう東京は満開だって!
花見、行きたいなぁ」

番組収録の待ち時間、楽屋でテレビを見ていた翔が嘆いた。

翔の嘆きももっともだ。
この仕事をしていると、季節の移り変わりを肌で感じられる機会はなかなかない。

桜と聞いて、俺は数週間前に交わしたある約束を思い出す。
満開となれば時間はそれほど残されていない。
今日が無理なら明日にでもと、早速携帯を取り出しメールを送る。

ほどなくして来た返信を見ると、夜なら時間があるらしい。
俺は夕方には仕事が終わる。
準備をする時間がある事に感謝し、待ち合わせの時間と場所を連絡する。
後は明日の天気がいい事を祈るばかりだ。

どうか晴れでありますように―。


願いが通じたのか、天気予報には太陽のマークが1つ。
日付が変わる頃まで雲は出ないらしい。

気を緩めると待っている楽しみに頬が緩む。
はっと我に返ると、ぱちんと頬を叩いて気合を入れる。

「リーダー、たまには煩悩全開でもいいんじゃない?」

そんな俺を京介が見ていたらしく、笑いながら冗談とも本気ともつかない言葉を投げて寄越す。

「…一磨は他に気を取られてミスするくらいでちょうどいい。
フォローは俺達がするから、たまには頼れ」

京介に便乗して義人までおかしな事を言い出したので、
俺は苦笑いするしかなかった。

「馬鹿な事言ってないで行くぞ」

視線を交わしてまだ何か言いたげな2人の肩をぽんと叩き、現場へ向かった。
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