side-JADE

□MARRY ME
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ホワイトデーにヒロインちゃんに指輪を渡してから数ヶ月。
すぐにでも関係各所に挨拶にと思っていたのに、
二人とも日々忙しくなる仕事に追われ、なかなか揃ってオフが取れずにいた。

ヒロインちゃんが久しぶりにオフがもらえるという話だったので、
前倒しに出来る仕事は片付けて、
その日に挨拶回りが出来るようにスケジュールを調整した。

「夏輝さん、すみません。忙しいのにオフ合わせてもらって」

「ううん。ツアー入ってなくてよかったよ。
ツアー出ちゃうとスケジュールの調整出来ないからね。
それよりも……せっかくのオフなのに休ませてあげられなくて、ごめん」

「そんな! 今までお世話になった方達にはきちんとご挨拶したいですし、
その為ならお休みなんてなくても大丈夫です!」

ヒロインちゃんは俺よりずっと若いのに、
周りへの気遣いや感謝がきちんと出来る。
いつだったか秋羅が、ああいう子を嫁にしたいなんて言ったくらいだ。

(挨拶……か……)

リーダーという立場上、そういった事には慣れているけれど、
明日の挨拶はいつもとは違い、胃が痛くなる思いだった……。



お互いの両親には事務所の許可が下りてから改めて報告しに行く事にしたので、
まずは最難関のヒロインちゃんの事務所へ。
いや、難関は事務所よりむしろ……。

「ヒロインさんとの結婚を認めていただきたくて、本日伺いました」

俺の目の前には眼鏡の奥に鋭く光る目。
そう。最難関はヒロインちゃんのマネージャー、山田さんだ。

「折原くんなら安心だ。
私は賛成だよ。ヒロインちゃん、おめでとう」

「ありがとうございます……!」

ラビットの社長さんはあっさりと認めてくれたけれど、
山田さんはずっと黙ったままでいる。
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