side-JADE

□片恋の休日
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(そろそろ構ってやらないと拗ねるかな…?)

長かったレコーディングもMIXを残すのみ。
早ければ今日中にも終わりそうだ。

徹夜での作業が続いたので、息抜きの為にスタジオを出て屋上へ向かう。
清々しい朝の空気を吸って大きく伸びをすると、煙草に火を点ける。

(前回…いつだったかなぁ)

指を折りながら時間を辿ると、それは半年も前だった。

(さすがにほったらかし過ぎだなぁ…機嫌損ねてないといいけど)

ふうっと煙を吐き出すと、あれをしてこれをして…と、
オフの予定を頭の中で組み立てる。

レコーディング終了翌日はオフになっている。
だから1日中構ってやれるなと考えていた時、ふと思い出した。

(そういえばヒロインちゃんに次のオフはいつか聞かれてたな)

ポケットから携帯を取り出すと、彼女に明日オフになりそうだとメールする。


しばらく空を見てボーッとしていると、
ヴヴヴと手に振動が伝わる。

「わっ!」

思考が他に飛んでいたので、驚いて携帯を落としそうになる。
落とす寸前で手の中に収め、着信画面をみるとヒロインちゃんの名前。

(えっと…明日俺んちに来てもいいかって?)

俺に何か用でもあるんだろうか?
春が彼女のプロデュースをするようになって顔を合わせる事が多くなった。
最初は可愛い妹みたいで目が離せなかったけど、
一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど、自分の中の彼女の存在が大きくなり、
いつしか俺は思いを寄せるようになっていた。

だけどきっと彼女は春の事が…そんな気がしていた。
そんな彼女が俺の家に来たいって、どういう事なんだろう?
頭の上に疑問符がいくつも浮かび、考えてみたが理由はさっぱり分からない。

(何か話でもあるのかな。春に言えないような事とか…?)

構ってやりたい相手はいるが出かける必要はないし、1日家にいる予定だ。
断る理由もないのでOKの返事をヒロインちゃんに返し、
ふと時計を目にやると思いの外時間が経っていた。

「やっべ!春に怒られる!」

ヒロインちゃんの意図は読めないけど、彼女が家に来る。
そんな明日に少し期待を抱きつつ、急いで煙草を消してスタジオへと戻る。

そして予定通りレコーディングが終わり、明日は待ちに待ったオフになった。
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