side-JADE

□Windy Road
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「明日は出来るだけ着込んで、寒くない格好で待ってて欲しい」

時計の針はもうすぐ日付が変わる時刻を指している。
まだ仕事中の春が空き時間に電話をしてきてくれて、
ちょっとだけ話が出来た。

その時にそう言われたんだけど、
寒くない格好で?
季節は冬だから暖かい格好をするのは当たり前だし…。
でもわざわざ『寒くない格好』って言うくらいだから何か意味があるはず。

手袋、ショート丈のコート、帽子。
スカートよりはズボンがいいかな?
明日、春が迎えに来てくれるのを楽しみにあれこれ準備をした。


ー翌日。
春が来る時間が迫った頃、外から聞き慣れない音がした。
車の音とはちょっと違う。

音が止まると、玄関のチャイムが鳴る。
ドアを開けると、春の姿。
いつもと違う格好に少し目を見張る。

革ジャン、革ズボンにショートブーツみたいな靴。
手に持っている外した手袋も革。
よく見ると髪も下ろしたままだった。

「春、今日はなんだかいつもと違うね?」

普段と違う姿にちょっとドキドキしていると、
それが分かったのかフッと笑って、

「準備は出来てる?」

と私に尋ねる春。

「出来てるよ。これにコートで大丈夫かな?」

セーターの下に長袖のシャツを着て、
ズボンにレッグウォーマー、ちょっと厚めの靴下。
さすがに着込みすぎかなと思ったけど、意外にも春の答えは…

「そのくらいでちょうどいいかも。
でも、これはいらないな…」

と帽子を指差す。

「え?だって帽子ないと寒いよ?」

「邪魔になるから…」

一体何が待っているのか分からないまま、
コートを着て春と一緒に玄関を出る。
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