三池亮太

□今夜ちょっとさ
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お互いに忙しい日々を送る中でのようやくのオフ。

テレビ局やラジオ局で顔を合わせる事はあっても話せる時間はわずか。
そんなこんなで最後に2人で過ごしてから1ヶ月も経っていた。

もらえた休みは1日だけ。
限られた時間をたっぷり楽しみたいから、
今日の仕事が終わったら俺の家で待っててと、ヒロインちゃんにメールした。

家に帰ると彼女がいる。
まだそれに慣れないし気恥ずかしい。
でもその感覚が嬉しくもある。
今日もそんな気持ちを抱いて、家路へと急ぐ。


それなのに―。

食事を済ませてゆったり寛ぐ俺達の間を嫌な空気が包む。
最初は些細な事だったけど言い合いに発展し、ふくれてしまった彼女。
こうなるともうどんな言葉をかけようとも聞いてはくれない。
そんな頑固な性格が分かっているから、彼女の気持ちを解す為にちょっとした作戦を練る。

ソファーに1人座る彼女にそっと近づいて、少し間を空けて座る。
ちょっとだけ俺と反対側にずれるけど、これは想定内。

後はタイミング。
彼女の方を横目でちらちらと見ながらその時を待つ。

(よし、今だ)

彼女に膝枕してもらう体勢に倒れこむ。
俺の突然の行動に目を丸くして動けないでいるヒロインちゃん。
こうなればもうこっちのペースだ。
ニヤリと口の端が上がる。

横向きに倒れた体を仰向けにして、そのままじっと彼女を見つめる。
目が合うとぷいっと顔を背けてしまったけど、
それに構わず彼女に視線を送り続ける。

やがて俺の視線に耐え切れなくなった彼女から、

「ごめんなさい…」

小さく呟く声が聞こえる。
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