中西京介

□Treasure hunt
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「京介くん、行って来ます」

今日がオフの俺と少しゆっくりめの午前中から仕事のヒロインちゃん。
まだ半分寝てる俺に、出かける彼女が声をかける。

「ん。行ってらっしゃい」

起きようとする俺を手で制する彼女。

「京介くん、オフなんだからゆっくり寝てて?
ご飯作ってあるから食べてね」

そう言い残し、ひらひらと手を振って出かけて行った。


それからしばらくうとうとして、起きたのは昼前。
彼女が作ってくれた朝食……もう昼食になってしまったそれを食べようとテーブルに目をやると、
一枚のメモが置いてあった。

『お茶はティーポットを使ってね』

……?

わざわざこんな事を書き置きしていくなんて変だな……。
でもメモに残していくくらいだから、何か意味があるのかもしれない。
そう思ってお茶を淹れにキッチンへ向かう。

ティーポットの蓋を取ると、中にはまたメモがあった。

『ご飯を食べ終わったらゆっくりテレビでもどうぞ』

ますます訳が分からない。
とりあえず食事を済ませて、テレビを見ようとソファーに座る。
リモコンを手に取ると、その下からまたメモが出て来た。

『ベランダの箱の中を見て?』

ベランダに出てみると、風で飛ばないように、
中に重し代わりのコインがいくつか入った小さな箱があった。
開けてみると中には見慣れない鍵とまたしてもメモが。

『お出かけするならどのジャケットかな?』

ここまで来ると彼女が何を企んでいるのか分からないが、
乗ってやろう、とことん楽しんでやろうという気になってきた。
寝室に向かい、クローゼットを開ける。

(出かけるなら…今日はこれかな?)

1着のジャケットを手に取ると重みを感じる。
ポケットを探ってみると、鍵付きの箱が出て来た。
さっきベランダで見つけた鍵を入れて捻ると、かちゃりと音を立てて開いた。

箱の中から出て来たのは綺麗にラッピングされた箱とメッセージカード。

『京介くん、お誕生日おめでとう』

ラッピングを取り、箱を開けると、そこにはちょっとハードなデザインのモチーフが付いたキーホルダーが収まっていた。
それは先日、俺がこんなの欲しいなと言いながら見ていたサイトにあったものだった。

そんな何気ない会話を覚えていてくれたのかと嬉しくなる。

明日の仕事が午後からの彼女は、またここに帰って来る。
その前に、この気持ちを今すぐ彼女に伝えたくて携帯を開いた。
ちょっとした悪戯心が湧いて来て、一言だけ彼女にメールを送る。

≪プレゼントありがとう。
だけど、もう一つ欲しいな。だから早く帰って来て?≫

一番欲しいプレゼントはベッドの上で……ね。

今夜は寝かせてあげられないかもしれないから、覚悟しといて?



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