VD企画

□新たなる一歩
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大逆転のバレンタインの後、俺達の事はしばらく黙っていようと決めたけれど、
2人とも分かりやすい為にWaveのメンバー、特に京介と亮太にはすぐにバレてしまった…。

でもそのお陰で色々とアドバイスももらえて、
メンバー以外の人には知られずに、ヒロインちゃんとの時間を育ててこられた。

そしてあれから3年の月日が過ぎ、バレンタインも3度目を迎えた。


3度目のバレンタイン、そして自身の誕生日でもある今日、
俺はある事を決めていた。
世間から見たらまだ若いと言われるかもしれない。

その言葉を撥ね退ける為に仕事に力を入れてきた。
ダンスレッスンも弱音を吐かずにこなしたし、
ドラマや映画も、どんな役でも不満を言わず演じた。

そんな姿に1番驚いていたのはメンバーだった。
あの一磨でさえも、最近は俺に一目置くくらい。
そういう周りの評価もしっかり分かった上での決意だ。


「ただいまー」

この3年のうちで大きく変わったのは彼女が家にいる事。
まだ一緒に住んではいないけど、時間があると必ず来てくれて、
余裕がある時は食事を作ったりしてくれる。

「翔くん、お帰りなさい」

こうして迎えてくれるのがどんなに幸せであるのかを、
あの決意が改めて分からせてくれた気がする。


彼女と食事をするひと時。
お互い忙しくてなかなか食卓を共にする事も少なくなったけれど、
今日だけはと、多少の無理をして時間を作った。

「じゃあ…バレンタインと誕生日に乾杯!」

チン、とグラスを合わせる。
2人とも成人してお酒が飲めるようになったのも変化した事の1つだ。
もっとも彼女は弱いのであまり飲めないけど…。

美味しい料理に美味しいワイン。
この後にはチョコも待っているに違いない。
きっとこれ以上のタイミングとシチュエーションはない。

「ヒロインちゃん、話があるんだ」

「えっ…は、はい」

俺の顔がいつになく真剣に見えたのか、居住まいを正す彼女。
そういう所はいつまでも変わらない。

「俺達さ、付き合って3年だよね。
お互い仕事も順調だし…」

困った…。
あまりに緊張して、そこから言葉をどう継いでいいのか分からなくなってしまった。

(あーもう!こんな時に俺って情けないな…)

上手い言葉でなくてもいい。
俺らしく伝えられればと、大きく息を吸って続けた。

「ヒロインちゃんの事もずっと見てきて、俺にはキミしかいないって思えたんだ。
これからも俺の隣にいて欲しいって…」

顔を上げてヒロインちゃんの目を見つめる。

「だから俺と…結婚して下さい」
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