VD企画

□surprise!
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見える景色は銀世界。
空港から一路、ライブ会場のドームへと向かう。

JADEは5大ドームツアーの真っ最中。
今日は札幌公演の最終日。

バレンタインと重なった今日をなんとか夏輝さんと過ごしたくて、
JADEのメンバーに協力をお願いしたり、
山田さんに仕事を調整してもらったりして北海道に来る事が出来た。


ライブは関係者席だと気付かれるかもしれないからと、
目立たないけど、夏輝さんがよく見える席を神堂さんが用意してくれた。
神堂さんの気遣いに感謝しつつ、ライブを楽しむ。

(そろそろいいかな…?)

会場に人がまばらになったのを確認すると、
バックステージパスを首に下げ、冬馬さんにメールを送る。

『大丈夫!なっちゃんは舞台監督が呼んでるからって追い出したから(笑)
俺らは先に帰るから頑張ってね〜』

協力して欲しいというお願いを快く引き受けてくれた冬馬さん達。
そんな彼らにもチョコを渡したかったので、
帰ってしまう前にと楽屋へ急いだ。

なんとか3人がホテルに戻る前に捕まえる事が出来て、
無事にチョコも渡せた。
義理でもいい!と満面の笑みで喜ぶ冬馬さんを思い出して、
笑いを堪えながら楽屋のドアの前に立つ。

大きく深呼吸をしてノックする。

―コンコン。


「はい。どうぞ」

ライブ後の夏輝さんに会うのは初めてなので、
ちょっと緊張しながらドアを開ける。

「お、お疲れ様です…」

そこには私を見て固まっている夏輝さんがいた。

「ヒロイン…ちゃん…?なんでここに…?」

「今日、どうしても会いたくて…来ちゃいました」

すると腕を取られ、ドアの内側に引き込まれる。
気がついた時には夏輝さんの腕の中だった。

「本当にヒロインちゃんだよね?会いたかった…」

優しいキスを何度もされる。
ツアーに出てからずっと会っていなかったので、
夏輝さんが同じ気持ちでいてくれた事が嬉しかった。

ライブ後でテンションが上がっているのか、はたまた久しぶりに会ったせいか、
優しかったキスが徐々に深くなってくる。
嬉しいけど…今日は…。

「夏輝さん…待って…」

ぐっと彼の胸を押して体を離す。

「ごめん…俺、余裕なかったね…」

まるで捨てられた子猫みたいにシュンとしてしまった夏輝さん。
時折見せる、いつもと違う少年みたいなその姿がたまらなく愛おしい。

「ううん…違うの。これを渡したくて…。
今日、バレンタインだから…」

驚きつつも、そうか、バレンタインだったなと呟きながら箱を受け取る彼。

「開けていい?」

頷く私を見て箱を開けていく。

「ヒロインちゃん…反則だって…。
俺…もう限界。すぐ帰ろう!」

そしてあっという間に帰り支度を終えると、
私の手を引き、滞在先のホテルへと向かうのだった。


箱の中身は工具の形をしたチョコレート。
バイクが好きな夏樹さんにぴったりだと思ったんだけど、
ぴったりすぎたみたい…?

これから始まる彼との時間を思うと、胸に走る甘い痛み。
もっと感じたいその痛みを抱えて、彼とホテルへの帰路に着いた。
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