VD企画

□大人とか子供とか
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彼と付き合い始めて初めてのバレンタイン。
オトナな彼にはこれしかないと、レシピを調べて作ったチョコはウイスキーボンボン。

正確にはウイスキーボンボン「風」。
色々調べたけど、お店で売られてるのと同じように作るのは難しいらしい。

お酒に弱い私は匂いだけで酔いそうになりながら、
それでも彼に喜んで欲しい一心で、ちょっと背伸びをして作った。


彼…秋羅さんは今レコーディングの真っ最中。
他のメンバーの分のチョコも持って、激励にスタジオに顔を出した。

「お疲れ様です!」

ちょうど休憩中だったみたいで、揃ってロビーで寛いでいた。

「あの…これ、差し入れというか、ちょっと早いバレンタインというか…」

と、紙袋を差し出すと、
その声を聞きつけて冬馬さんがダッシュで駆け寄ってくる。

「まさかヒロインちゃんの手作り?!俺、生きててよかったー!」

抱きつこうとする冬馬さんの襟首を掴んで止めるのは…。

「俺の目の前でそんな事しようとするなんていい度胸してるな」

「ちょ…秋羅!スキンシップじゃんかよぉ〜」

秋羅さんと冬馬さんはいつもこんな感じ。
仲がいいんだなとちょっと羨ましい。

「秋羅さんにはこれ…」

別にしていた包みを差し出す。
横で冬馬さんが何か騒いでいたけど、夏輝さんと神堂さんに引きずられるようにして

廊下に出て行った。

「口に合えばいいんですけど…あ、お酒入ってるので後で食べて下さ…」

最後まで言い終わらないうちに1つ口に入れてしまう秋羅さん。

「美味いな。でもこれ、作るのに無理したんじゃないか?
結構強めの酒っぽいし」

「秋羅さんに喜んで欲しかったし…大人な秋羅さんに釣り合うには
このくらいしないと…」

「馬鹿だな」

言葉と同時に煙草の香りが近づいて、ふわりと抱きしめられる。

「そんな事しなくたって…そのままでいてくれればいいんだ。
大人だとか子供だとか、そんなのは言わせておけばいい」

彼の煙草と香水の香りはやっぱり大人を感じさせるけど、
秋羅さんの言葉はその垣根を取ってくれた気がする。

初めてのバレンタインはほろ苦い中にも甘さが隠れていた。




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