VD企画

□How much is a return gift?
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今日はバレンタイン。
ちょうどテレビ局でお互いに仕事があるので、直接チョコを渡せる。
この日の為に頑張って作った手作りのトリュフチョコ。

そろそろ亮太くんが来る時間だ。
楽屋を出て周りを見ると、彼が歩いてくるのが見えた。

あまり人に見られたくないから、駆け足で彼の許へと向かう。
その時…。


ズッテーン!


滑る床に足を取られ、豪快に転んでしまった…。

「痛…」

(うぅ…何やってんの私…)

スッと目の前に差し出される手。
顔を上げると亮太くんだった。
横を向いて肩を揺らして笑っている。

「ヒロインちゃん、大丈夫?
随分思い切って転んだねぇ。そんなに俺に会いたかったんだ?」

口の端をちょっと上げて意地悪そうに笑ういつもの顔。

「ち、違うよ!ちょっと滑っただけだってば…」

差し出された手を取ると、グッと引き上げられる。
立ち上がって少し落ち着いてくると、ある事に気付いた。

(あれ?箱は…?)

転んだ拍子に転がっていったらしく、数メートル先にぽつんと転がっているのが目に

入った。

慌てて箱を拾いに行く。
外見は何ともないけど、中身がどうなってるか…。
とにかく、これは亮太くんには渡せない。

「チョコ、作り直すね。
でもバレンタイン過ぎちゃう…ごめんね…」

亮太くんはその言葉が聞こえなかったかのように、
しょんぼりする私から箱をさっと取り上げると、

「開けていい?」

その問いに私が答える前に箱を開けている…。
案の定、トリュフは箱の中でぐちゃぐちゃだ。

「ダメだよ、そんなのあげられない!返して!」

亮太くんは箱を取り戻そうとする私を器用にかわし、
1つつまむと口に放り込んだ。

「あっ…!」

「なんでー?これ俺のでしょ?返さないもんねー
それにこんなに美味しいの、返せる訳ないしー」

平然として2つ目を食べて満足そうにしている亮太くん。

「まったくヒロインちゃんはそそっかしいんだから。
床じゃなくて俺の胸に飛び込んでくれば、チョコも助かったのにねー?」

くすくすと笑いながらそう言うと、私の額にデコピンを1発。
そのまま耳元に口を寄せると…。

「3倍返し、楽しみにしてて?」

ホントは3倍なんかじゃ足りない。
10倍…いや、100倍にしてこの気持ちを返すから覚悟しててね?




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