VD企画

□SWEET TIME
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2月に入るとあちこちで「チョコ」という単語を耳にする。
俺だって男だから気にならない訳じゃない。
もちろんファンの子から毎年沢山もらうけど、
俺が欲しいチョコは…。

VD10日前。
今日は俺達Waveの番組収録の日。
ゲストは…絶賛片思い中の相手、ヒロインちゃん。

収録前に楽屋に挨拶に来た時、期待した。
チョコ…もらえたけど明らかに義理チョコだよな、これ…。
メンバー皆に渡してたし。

がっかりした気持ちを隅っこに追いやって番組収録をこなす。
今日の仕事はこれで終わり。
1人寂しく帰るかと楽屋を出た所で携帯がメールの着信を知らせる。

「話があるから屋上で待ってる…?」

相手はヒロインちゃん。
この寒いのに屋上でなんて…そんなに重要な話なのかな?
とにかく待たせても悪いから、急いで階段を上る。

屋上のドアを開けると、ヒロインちゃんの後姿が見えた。

「ヒロインちゃん?」

声をかけると弾かれたように振り向く彼女。

「翔くん。ごめんね、呼び出したりして」

「ううん。どうしたの?屋上なんて寒いのに…。
まだ楽屋にメンバーいるからそっちで話そう?」

俺の言葉に彼女は頭を横に振った。

「皆いると…ないから…」

彼女の声は消え入りそうなほど小さい。
よく聞こうともう一歩近づくと、小さな箱が差し出された。

「これ…?」

「収録前だと時間なくて翔くんだけに渡せないと思って…。
でも翔くんだけにあげないと変に思われるから、皆にって形で渡したの」

(それって…まさか…?)

「翔くん…私、翔くんが好きです…」

きっとありったけの勇気を振り絞って俺を呼び出したんだろう。
薄暗くなった夕暮れの中でも、彼女が赤くなっているのが分かる。

「ありがとう、ヒロインちゃん…。
俺もヒロインちゃんが好き…だよ」

両手で彼女の肩を抱き寄せると、額にキスをする。

寒さも吹っ飛ぶ大逆転のバレンタイン・ディ。
これからはチョコに負けない甘い時間を、キミと過ごしていこう…。




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